神奈川県立横須賀高校ラグビー部
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『堂々たる継承』 vs湘南工大附属
2010/11/02
ノーサイドの笛が鳴り響き、熊坂組の1年間の戦いが終わった。最終スコアは「10-19」。湘南工大附属にほんのあと一歩、及ばなかった。
神奈川工業と桐光学園を破り、ついにたどり着いた対シード校。相手は春の県ナンバー3。関東大会ではブロック優勝を果たし、つい2週間前の練習試合では春の覇者・慶応高校を倒しているほどの強豪だ。同じ土俵でラグビーをやっては、何十点差をつけられるか分からない。下馬評では1割ほどの部もないと言われた勝負だが、まさにこの日のためにこのレベルの相手を想定した練習を重ねてきた。今年の横高の強みであるFWを軸にゲームを支配し、あとは伝統のDFでどれだけ我慢強く倒し続けることができるか。誰が何と言おうと、横高は「勝つのは俺たちだ」の揺るぎない自信を胸に、キックオフを迎えた。
刺さる。煌めく才能たちで構成された湘南工大のフレアなアタックに対し、低く、鋭く、延々と刺さり続けた。もちろんある程度の組織DFは練習してきた。しかしこの日のDFは組織など関係なし。ギャップだらけ、間隔も適当でバラバラ。システムも意思統一もなし。ただ意地と覚悟が溢れ出る個人が、次々と狂ったように飛んで突き刺さる。15の矢が不特定な方向から次々と飛んでくるから相手はかわせない。そんなDFが続いているうちに「何度攻められても今日は守れる」の空気が生まれたのだが・・・。もしも失点するとしたらペナルティーによる自滅。残念ながらその不安要素を克服することができなかった。
初戦の悪夢以降、「絶対にペナルティーしない」を一大テーマに、ペナルティーしない練習をメニュー化してまでやってきた。ディシプリン(規律・自制)の欠如。これも能力の一つと言うしかない。想定していたのに律することができなかった連続ペナルティーでゴール前へ。何度か凌いだのちに、ついにインゴールを明け渡してしまった。「0-7」。
しかしその直後、攻撃の起点であるドライビングモールで相手に圧力をかける。何度でも何度でも愚直にモールを押し込み、ついに認定トライ。「7-7」。その後も勢いを増したタックルとFW戦で圧力をかけ続けてペナルティーを獲得。ついに「10-7」とリードして前半を終えた。ハーフタイムのテンションは最高潮。勢いは完全に横高に。しかも後半は風上だ。
後半開始。強い信念を持って変わらぬ戦術で30分戦うだけだ。ところがこのキックオフが勝負の分岐点となった。いよいよ火のついた湘南工大のFWからキックボールをかっさらわれると、開始早々いきなり自陣釘づけ。横高にあった流れを一瞬で奪われ、こちらの裏をかくサインプレー一発で逆転されてしまった。ゴールも決まり「10-14」の4点ビハインド。そしてスコア以上に痛手となったのは、後半早々に機先を制され、勢いを失ったことでその後の決断力が鈍ってしまったことだ。
DFは相変わらず「何度でも守れる」のナイスタックルを繰り返すも、攻撃に関しては心理的に守りに入り、大胆な決断ができない。勝負所でノープレッシャーのラインアウトミスが2回。明確な意思で対応してきた相手のモールDFを崩すべく、モールの組み方を変化させる決断が下せない。(タラレバ感はあるが)時間とスコアとラインアウトの状態を考えると、狙うべきだったPGを狙わない。攻撃の柱である「モール」が、むしろ勇気と決断力を失わせてしまった。
いけそうでいけない。ちょっと押せる。でも取れそうで取れない。中途半端なゴール接近が、「PG」「別の組み方」「ピールオフ」「オールメンラインアウト」という決断に至らせない。それに対して、湘南工大は試合巧者ぶりを随所に発揮。がっぷり四つの攻防では全く互角に渡り合えたが、ドロップアウトやPKのリスタートなど、集中力や攻防の「隙間」ともいえるエアポケットを憎たらしいほど見逃さず、リズムを作る。4点差のままラスト2分。BKの軸がノットロールアウェイでシンビンとなり、ポジションの配置についてチームで意思統一しようと集まりかけた瞬間、ゲーム再開のホイッスル。その機を逃すことなく無人の大外にボールを展開してゴール前へ。「10-19」万事休す。
ノーサイドのホイッスルが鳴り響き、熊坂組の戦いが終わった。
よく戦った。この言葉に偽りはない。心の底から熊坂組を称えたい。胸を張っていい結果だと思う。それでも「これが精一杯」とは思わない。勝てた。勝てるチャンスを逃した。禁句のはずのタラレバが尽きない。しかし一つや二つのタラやレバで、勝つことができる試合だった。悔しい。しかしそれは、熊坂組がそこまで到達できたということでもある。花園予選まで「公式戦で勝ち星なし」。冬の市大会では横須賀総合に敗れ、練習試合では桐光学園に敗れたチーム。
4月の監督交代に伴う大改革という激流に耐え、高い意識を持って誠実にひたむきに努力の日々を過ごした。夏を越え、横須賀総合を倒し、桐光学園を倒した。そしてこの日、県NO3を倒す直前まで追い詰めた。シード奪還という目標は実現できなかった。しかしこの歩みを見て、この日の激闘を見て、すべての関係者が認めてくれるだろう。熊坂組は横高ラグビー部の伝統と誇りを立派に継承した。生涯の宝物となったに違いない仲間とともに、胸を張って笑顔で人生の次のステージに進んでほしい。この日の悔しさと魂のタックルは、後輩たちが必ず引き継いでくれる。
熊坂組のみんな、本当にありがとう。本当に立派でした。おつかれさまでした。
神奈川工業と桐光学園を破り、ついにたどり着いた対シード校。相手は春の県ナンバー3。関東大会ではブロック優勝を果たし、つい2週間前の練習試合では春の覇者・慶応高校を倒しているほどの強豪だ。同じ土俵でラグビーをやっては、何十点差をつけられるか分からない。下馬評では1割ほどの部もないと言われた勝負だが、まさにこの日のためにこのレベルの相手を想定した練習を重ねてきた。今年の横高の強みであるFWを軸にゲームを支配し、あとは伝統のDFでどれだけ我慢強く倒し続けることができるか。誰が何と言おうと、横高は「勝つのは俺たちだ」の揺るぎない自信を胸に、キックオフを迎えた。
刺さる。煌めく才能たちで構成された湘南工大のフレアなアタックに対し、低く、鋭く、延々と刺さり続けた。もちろんある程度の組織DFは練習してきた。しかしこの日のDFは組織など関係なし。ギャップだらけ、間隔も適当でバラバラ。システムも意思統一もなし。ただ意地と覚悟が溢れ出る個人が、次々と狂ったように飛んで突き刺さる。15の矢が不特定な方向から次々と飛んでくるから相手はかわせない。そんなDFが続いているうちに「何度攻められても今日は守れる」の空気が生まれたのだが・・・。もしも失点するとしたらペナルティーによる自滅。残念ながらその不安要素を克服することができなかった。
初戦の悪夢以降、「絶対にペナルティーしない」を一大テーマに、ペナルティーしない練習をメニュー化してまでやってきた。ディシプリン(規律・自制)の欠如。これも能力の一つと言うしかない。想定していたのに律することができなかった連続ペナルティーでゴール前へ。何度か凌いだのちに、ついにインゴールを明け渡してしまった。「0-7」。
しかしその直後、攻撃の起点であるドライビングモールで相手に圧力をかける。何度でも何度でも愚直にモールを押し込み、ついに認定トライ。「7-7」。その後も勢いを増したタックルとFW戦で圧力をかけ続けてペナルティーを獲得。ついに「10-7」とリードして前半を終えた。ハーフタイムのテンションは最高潮。勢いは完全に横高に。しかも後半は風上だ。
後半開始。強い信念を持って変わらぬ戦術で30分戦うだけだ。ところがこのキックオフが勝負の分岐点となった。いよいよ火のついた湘南工大のFWからキックボールをかっさらわれると、開始早々いきなり自陣釘づけ。横高にあった流れを一瞬で奪われ、こちらの裏をかくサインプレー一発で逆転されてしまった。ゴールも決まり「10-14」の4点ビハインド。そしてスコア以上に痛手となったのは、後半早々に機先を制され、勢いを失ったことでその後の決断力が鈍ってしまったことだ。
DFは相変わらず「何度でも守れる」のナイスタックルを繰り返すも、攻撃に関しては心理的に守りに入り、大胆な決断ができない。勝負所でノープレッシャーのラインアウトミスが2回。明確な意思で対応してきた相手のモールDFを崩すべく、モールの組み方を変化させる決断が下せない。(タラレバ感はあるが)時間とスコアとラインアウトの状態を考えると、狙うべきだったPGを狙わない。攻撃の柱である「モール」が、むしろ勇気と決断力を失わせてしまった。
いけそうでいけない。ちょっと押せる。でも取れそうで取れない。中途半端なゴール接近が、「PG」「別の組み方」「ピールオフ」「オールメンラインアウト」という決断に至らせない。それに対して、湘南工大は試合巧者ぶりを随所に発揮。がっぷり四つの攻防では全く互角に渡り合えたが、ドロップアウトやPKのリスタートなど、集中力や攻防の「隙間」ともいえるエアポケットを憎たらしいほど見逃さず、リズムを作る。4点差のままラスト2分。BKの軸がノットロールアウェイでシンビンとなり、ポジションの配置についてチームで意思統一しようと集まりかけた瞬間、ゲーム再開のホイッスル。その機を逃すことなく無人の大外にボールを展開してゴール前へ。「10-19」万事休す。
ノーサイドのホイッスルが鳴り響き、熊坂組の戦いが終わった。
よく戦った。この言葉に偽りはない。心の底から熊坂組を称えたい。胸を張っていい結果だと思う。それでも「これが精一杯」とは思わない。勝てた。勝てるチャンスを逃した。禁句のはずのタラレバが尽きない。しかし一つや二つのタラやレバで、勝つことができる試合だった。悔しい。しかしそれは、熊坂組がそこまで到達できたということでもある。花園予選まで「公式戦で勝ち星なし」。冬の市大会では横須賀総合に敗れ、練習試合では桐光学園に敗れたチーム。
4月の監督交代に伴う大改革という激流に耐え、高い意識を持って誠実にひたむきに努力の日々を過ごした。夏を越え、横須賀総合を倒し、桐光学園を倒した。そしてこの日、県NO3を倒す直前まで追い詰めた。シード奪還という目標は実現できなかった。しかしこの歩みを見て、この日の激闘を見て、すべての関係者が認めてくれるだろう。熊坂組は横高ラグビー部の伝統と誇りを立派に継承した。生涯の宝物となったに違いない仲間とともに、胸を張って笑顔で人生の次のステージに進んでほしい。この日の悔しさと魂のタックルは、後輩たちが必ず引き継いでくれる。
熊坂組のみんな、本当にありがとう。本当に立派でした。おつかれさまでした。
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