神奈川県立横須賀高校ラグビー部
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vs湘南工大附属 『取り戻したあの日の25分間』
2011/01/10
人生で何度もあることではない。明らかな格上の相手に対し、周到な準備と覚悟をもって挑みかかり、勝利のこぶしを突き上げる。努力の量が多いほど、払った犠牲が大きいほど、敗戦を想像した際の恐怖は大きなものとなる。それでも己と仲間を信じ、すべてが実ったとき、涙腺が緩むほどの感動がご褒美として与えられる。
2011年1月9日、稲垣組は敬愛する兄貴分・熊坂組を引退に追い込んだ宿敵湘南工大附属を倒して復讐を達成すると同時に、公立唯一のベスト8入り、悲願のシード権獲得を成し遂げた。
抽選会で湘南工大附属の山のくじを引いたときは、正直まだ復讐のイメージは持てなかった。何しろ偉大な熊坂組が抜け、チームをこれから牽引する2年生の人数は11名(経験者は僅か2名)、フィジカル的にも運動能力的にも、そしてラグビー能力的にも高いとは到底言えない代だ。この日もスタメンの半数以上が1年生という未成熟なチーム。対する湘南工大附属は、チームのほぼ全員がラグビー経験者で、2月に行われる都県大会のオール神奈川候補をBKに4枚揃えるサラブレット集団(大駒2人もケガから復帰し、この日はベストメンバー)。
新人戦という段階を考えると、本来は基本練習と体作りに専念し、順当な大敗を喫し、「まだ時間がかかります」と敗戦後にコメントするのが適当なのかもしれない。しかし新人戦後に残された大会は2つのみ。くじ運次第のトーナメント制なので、もしかしたら湘南工大に復讐は果たすには最初で最後のチャンスになるかもしれない。「打倒湘南工大」を合言葉に、チームは一つにまとまった。
冬休み、ほとんどの練習日で二部練もしくは三部練を敢行した。練習を終えるときには「勝てるか?湘南工大に」と何度も確認し合った。まるで花園予選のような空気。「これだけやったから勝てる」の自信、「これだけやったのに負けたら」の不安、チームを包んだのは前者だった。
格上を倒すゲーム前には、ある特有の空気が流れる。私のラグビー人生でも3~4度だけ体験したことがある不思議な空気。不安はなく、かと言って熱気が迸るわけでもない。不思議なほど心は落ち着き、清々しく自信だけが満ち溢れ、キックオフが待ち遠しくなる。前日からまさにそんな空気だった。
12時15分、キックオフ。激しいプレッシャーをかけてくる湘南工大の前に、思い通りにゲームが運べない。それでもアイデンティティーであるDFで必死に応戦し、我慢を続けて前半は強烈な風下を「3-0」リードで終えた。思えばつい3か月前、熊坂組も「10-7」の3点リードで風下を折り返したが、後半開始早々に逆転されて敗れた。
ハーフタイムでは「熊坂組が進めなかったこの後半30分を俺たちで取り戻そう。進化を証明しよう」と気持ちを引き締めた。にも関わらず後半開始早々に失トライ。不吉な記憶が蘇る嫌になるほど同じ展開だ。しかしこの先の25分間で、稲垣組が進化を証明してみせた。
ヒロポンのPGで「6-5」と再びリードすると、DFが何の不安も生じないほど安定。風上によるエリア獲得の優位を生かし、PGとトライを重ねて「14-5」とリード。最後はDFからチャンスを生み出して決定打のトライで「19-5」。その後も相手を敵陣深くに釘づけにしたままノーサイド。見事に熊坂組の敵討ちを成し遂げ、熊坂組が追い求めて届かなかったベスト8、シード権を獲得した。
T I
『試合が終わった瞬間は勝った実感が湧きませんでした。熊坂組が負けて引退した相手だったのでその仇を自分の代で取れたのは本当によかったと思います。またこれが達成できたのも保護者の方々とOBのご協力あっての事だと思います。これからも応援お願いします。』
くわまん
『もっと圧倒したかった試合だったと思います。一人一人の意識が細部ではまとまっていなかったので、トライに繋がらなかったのだと思います。これを今後の課題として、チームの考え方をもう一度整理し、精度を上げていきたいです。 』
ヒロポン
『自分が入学当初からの目標としてきたベスト4に挑戦できる立場になれて素直にうれしいです。しかし、この試合で自分はなんどもミスを重ねてしまいました。ただただ、個人の責任で幾度ものピンチを作ってしまいました。けれど、それをカバーしてくれ、さらに勝利に導いてくれたみんなには感謝がいっぱいです。また、とてもいい環境を作ってくださっている父兄やOBにも感謝でいっぱいです。この気持ち示すためにも次も勝ちます。応援よろしくお願いします。』
オリンピック
『今回の試合は楽しかったけど悔しい試合でもありました。対シード校のために練習してきたプレーでトライを取れなかったからです。もっと練習が必要だなと思いました。次の試合に向けて、この1週間で最高の状態に仕上げていきたいです。斎藤先生も言っていたようにこの試合でまたとないチャンスを掴めたのだから次の試合もこの調子で勝ちに行きましょう。』
努力は実るとは限らない。かつて早稲田大学ラグビー部のある先輩から「努力とは実ってはじめて努力と言える。実らなければそんなものは努力とは呼べない」というドライで突き刺さる言葉を教えてもらったこともある。しかしこの日は「努力し、懸け、信じ、貫き、勝利の感動を味わう」という、かけがえのない経験を手に入れることができた。もっと努力し、もっと懸けることができたなら・・・。この経験は、もしかしたら一人ひとりの人生にとって大きな大きな分岐点になるかもしれない。
2011年1月9日、稲垣組は敬愛する兄貴分・熊坂組を引退に追い込んだ宿敵湘南工大附属を倒して復讐を達成すると同時に、公立唯一のベスト8入り、悲願のシード権獲得を成し遂げた。
抽選会で湘南工大附属の山のくじを引いたときは、正直まだ復讐のイメージは持てなかった。何しろ偉大な熊坂組が抜け、チームをこれから牽引する2年生の人数は11名(経験者は僅か2名)、フィジカル的にも運動能力的にも、そしてラグビー能力的にも高いとは到底言えない代だ。この日もスタメンの半数以上が1年生という未成熟なチーム。対する湘南工大附属は、チームのほぼ全員がラグビー経験者で、2月に行われる都県大会のオール神奈川候補をBKに4枚揃えるサラブレット集団(大駒2人もケガから復帰し、この日はベストメンバー)。
新人戦という段階を考えると、本来は基本練習と体作りに専念し、順当な大敗を喫し、「まだ時間がかかります」と敗戦後にコメントするのが適当なのかもしれない。しかし新人戦後に残された大会は2つのみ。くじ運次第のトーナメント制なので、もしかしたら湘南工大に復讐は果たすには最初で最後のチャンスになるかもしれない。「打倒湘南工大」を合言葉に、チームは一つにまとまった。
冬休み、ほとんどの練習日で二部練もしくは三部練を敢行した。練習を終えるときには「勝てるか?湘南工大に」と何度も確認し合った。まるで花園予選のような空気。「これだけやったから勝てる」の自信、「これだけやったのに負けたら」の不安、チームを包んだのは前者だった。
格上を倒すゲーム前には、ある特有の空気が流れる。私のラグビー人生でも3~4度だけ体験したことがある不思議な空気。不安はなく、かと言って熱気が迸るわけでもない。不思議なほど心は落ち着き、清々しく自信だけが満ち溢れ、キックオフが待ち遠しくなる。前日からまさにそんな空気だった。
12時15分、キックオフ。激しいプレッシャーをかけてくる湘南工大の前に、思い通りにゲームが運べない。それでもアイデンティティーであるDFで必死に応戦し、我慢を続けて前半は強烈な風下を「3-0」リードで終えた。思えばつい3か月前、熊坂組も「10-7」の3点リードで風下を折り返したが、後半開始早々に逆転されて敗れた。
ハーフタイムでは「熊坂組が進めなかったこの後半30分を俺たちで取り戻そう。進化を証明しよう」と気持ちを引き締めた。にも関わらず後半開始早々に失トライ。不吉な記憶が蘇る嫌になるほど同じ展開だ。しかしこの先の25分間で、稲垣組が進化を証明してみせた。
ヒロポンのPGで「6-5」と再びリードすると、DFが何の不安も生じないほど安定。風上によるエリア獲得の優位を生かし、PGとトライを重ねて「14-5」とリード。最後はDFからチャンスを生み出して決定打のトライで「19-5」。その後も相手を敵陣深くに釘づけにしたままノーサイド。見事に熊坂組の敵討ちを成し遂げ、熊坂組が追い求めて届かなかったベスト8、シード権を獲得した。
T I
『試合が終わった瞬間は勝った実感が湧きませんでした。熊坂組が負けて引退した相手だったのでその仇を自分の代で取れたのは本当によかったと思います。またこれが達成できたのも保護者の方々とOBのご協力あっての事だと思います。これからも応援お願いします。』
くわまん
『もっと圧倒したかった試合だったと思います。一人一人の意識が細部ではまとまっていなかったので、トライに繋がらなかったのだと思います。これを今後の課題として、チームの考え方をもう一度整理し、精度を上げていきたいです。 』
ヒロポン
『自分が入学当初からの目標としてきたベスト4に挑戦できる立場になれて素直にうれしいです。しかし、この試合で自分はなんどもミスを重ねてしまいました。ただただ、個人の責任で幾度ものピンチを作ってしまいました。けれど、それをカバーしてくれ、さらに勝利に導いてくれたみんなには感謝がいっぱいです。また、とてもいい環境を作ってくださっている父兄やOBにも感謝でいっぱいです。この気持ち示すためにも次も勝ちます。応援よろしくお願いします。』
オリンピック
『今回の試合は楽しかったけど悔しい試合でもありました。対シード校のために練習してきたプレーでトライを取れなかったからです。もっと練習が必要だなと思いました。次の試合に向けて、この1週間で最高の状態に仕上げていきたいです。斎藤先生も言っていたようにこの試合でまたとないチャンスを掴めたのだから次の試合もこの調子で勝ちに行きましょう。』
努力は実るとは限らない。かつて早稲田大学ラグビー部のある先輩から「努力とは実ってはじめて努力と言える。実らなければそんなものは努力とは呼べない」というドライで突き刺さる言葉を教えてもらったこともある。しかしこの日は「努力し、懸け、信じ、貫き、勝利の感動を味わう」という、かけがえのない経験を手に入れることができた。もっと努力し、もっと懸けることができたなら・・・。この経験は、もしかしたら一人ひとりの人生にとって大きな大きな分岐点になるかもしれない。
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