神奈川県立横須賀高校ラグビー部
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準々決勝 vs法政二高 『風に乗って』
2011/01/17
人生で何度もあることではない。この書き出しでは前回記事と全く同じだ。ならば言い直すと、人生でたぶん二度とない。私の20年近いラグビー歴でもこんなケースの当事者になるのは初めてだ。1月16日、新人戦準決勝・法政二高戦は、そんな劇的な試合となった。
悲願のシード権奪取から1週間。ベスト4をかけた準々決勝が行われ、古豪・法政二高と対戦した。勝てばベスト4。それは横高ラグビー史上で最高位と並ぶことを意味する。伝統を継承したすべての代の先輩方への最高の恩返しは、ベスト4というこの記録を塗り替えることだ。
湘南工大を破って満足している集団が戦ったとしたら、間違いなく惨めな大敗を喫することになる。このグランドに立つすべての選手が初体験となるベスト8ゲーム。チーム状態は全く良いが、「心理面」での不安は払拭できない。・・・的中だ。ウォーミングアップでハンドリングエラーが連発。BKのパス回しもチームランもミスだらけでボロボロ。その様子は明らかに先週の大津グランドでの試合前とは異なっていた。
「BK集合!ヘイヘイ!何硬くなってんだよ?タックルすりゃいいんだよ。タックルタックルタックル!」と声をかけつつ、この試合で序盤はボールを大きく動かすことは避けた方がよさそうだと苦くも確信した。
12:15 キックオフ
トスに勝ったキャプテン・たいちの決断は、強い風を背に受けた風上の陣地選択。この選択がその72分後の劇場の決定的ファクターになることは、まだ誰も知る由も無かった。前半は風を受けて優位に進める。しかし法政の強靭なフィジカルと気迫を前に、あと一歩でスコアできない。普段なら難しくはない距離角度のPGを狙うも、二本とも失敗。ヒロポンもやはり緊張しているのか。結局、お互いがDFで粘り続け、「0-0」という現代ラグビーで希少なスコアでハーフタイムを迎えた。後半は強い風下となる。これは相当しんどい展開が予想された。
いったいこの藤沢付近上空にどんな現象が生じたのだろう?ハーフタイムの円陣をとき、後半開始のキックオフを待っているとき、風は変わった。なんと風向きが180度方向転換し、見事な追い風になったのだ。しかも強風。
後半開始早々からエリア合戦を完全優位に進め、ついにPG成功。「3-0」均衡を破った。あまりに風が強くキックを諦めざるを得なかった法政は怒涛のアタックを開始。攻める法政、守る横須賀。この攻防が延々と続き、ついにラスト2分となったところで、試合は大きく動いた。法政の素晴らしい気迫の前にタックルが弾かれ、この土壇場で痛恨の失トライ。コンバージョンキックは外れたが、「3-5」と逆転されてしまった。リスタートのドロップキックを蹴ったとき、時計の針は無常にも「29分」。
競って再獲得しなければいけないドロップキックが相手の胸に入ってラックを停滞された瞬間、おそらくすべての観客と法政ベンチは、法政の勝利を確信した。しかしそこで横高が偶然か意図的か作り出した状況が見事だった。ブレイクダウンに多数かけてプレッシャーを与え、ラインDFはガラガラ。法政にとっては左サイドに人数比「4-2」という大チャンス状況が生まれた。結果、ボールを動かしてくれた法政にプレッシャーをかけ、運命のホイッスルが鳴り響いた。
敵陣10mライン手前、タッチから10mで横高ボールのPK。レフリーに時間を確認すると「ラストワンプレー。(タッチに)切ったら終わり」と一言。選択肢としてはタップキックから攻めるか、届く可能性の限りなく低いPGを狙うか。29分に一度は死んだ命。一か八かのPGにすべてを託した。距離にして47m。届くとしたら正キッカーではないが当たれば飛ぶ(が、なかなか当たらない)コボちゃんだけだ。しかし正キッカーのヒロポンは腹をくくった。「俺が蹴る」。おそらく、ヒロポンをのぞくすべての見守る人々は五分五分の祈りではなく、1割程度の奇跡への祈りだったに違いない。
ヒロポンの足から放たれた楕円球は、真後ろから優しくすくい上げてくれるかのごとく奇跡的に吹く風に運ばれて、美しくH型ポールのど真ん中を越えた。
「ピー!ゴール!ピッピッピー!ノーサイド!」
たいち
『自分達のこだわっているところで勝てたのは本当によかったです。ここはずっとやって練習してきたのがやっと身を結んだんだと思いました。また、新人戦という大会ではありますが自分の憧れの代の浮津組がなれなかったベスト4になれたのが一番嬉しいです。次の慶応戦は今まで以上に楽しんで試合をしたいです。 』
ヒロポン
『試合内容はベストと呼べるものじゃなかったしなんども得点に絡むミスをしてしまった。それでも結果勝った。横須賀高校至上最高成績のベスト4。そして、自分の目標であり実は少し諦めかけていた夢。とうとうここまでこれて本当に嬉しい。BKもFWも信頼しあっていたし自分もみんなのことを信頼しあっていた。だからこの試合は勝つことができた。今はもう、いち早く次の試合をしたくてしょうがない!!最後になりますが、応援ありがとうございました。次もよろしくお願いします。 』
バンブー
『今回の試合はチームで勝利を信じきれた結果だと思います。何度もトライを取られそうになったけど我慢し続け勝つことを信じて、ひたむきにディフェンスしました。FWとしてはセットプレーでミスがあったのでそこの修正と法政のナイスタックルで何度も阻まれてスコアできなかったので、次はもっと頑張ります。 本当に勝てて嬉しいです。こんなに心の底から嬉しいと思った勝利は今までにありませんでした。 』
いっちー
『横須賀高校の最高記録に並べるかどうかがかかった試合でした。全員が一丸となって練習の成果を出し、DFすることができたことで手に入れた勝利だと思います。だけど自分個人では全く満足のいくプレーができなく、特にアタックでチームに迷惑をかけてしまいました。多くの課題は残りましたが、なにはともあれ勝てて、ベスト4入りすることができてよかったです!これに満足することなく次を見たいと思います。 』
冬休みの努力、湘南工大戦の激闘とリベンジ、1月から吹き続ける風に見事に乗った横高ラグビー部は、法政二高を下してベスト4進出を決めた。地力がついたわけではない。決して上手くも強くもない。運に恵まれた。しかし運を拾える力は養えたようだ。もちろん、湘南工大と法政二高を1トライずつに押さえたDF力は確かだ。次はいよいよ準決勝、慶應高校戦。1年生試合のリベンジのチャンス。横高伝統の激しさと気概。いざ、この追い風に乗って。
悲願のシード権奪取から1週間。ベスト4をかけた準々決勝が行われ、古豪・法政二高と対戦した。勝てばベスト4。それは横高ラグビー史上で最高位と並ぶことを意味する。伝統を継承したすべての代の先輩方への最高の恩返しは、ベスト4というこの記録を塗り替えることだ。
湘南工大を破って満足している集団が戦ったとしたら、間違いなく惨めな大敗を喫することになる。このグランドに立つすべての選手が初体験となるベスト8ゲーム。チーム状態は全く良いが、「心理面」での不安は払拭できない。・・・的中だ。ウォーミングアップでハンドリングエラーが連発。BKのパス回しもチームランもミスだらけでボロボロ。その様子は明らかに先週の大津グランドでの試合前とは異なっていた。
「BK集合!ヘイヘイ!何硬くなってんだよ?タックルすりゃいいんだよ。タックルタックルタックル!」と声をかけつつ、この試合で序盤はボールを大きく動かすことは避けた方がよさそうだと苦くも確信した。
12:15 キックオフ
トスに勝ったキャプテン・たいちの決断は、強い風を背に受けた風上の陣地選択。この選択がその72分後の劇場の決定的ファクターになることは、まだ誰も知る由も無かった。前半は風を受けて優位に進める。しかし法政の強靭なフィジカルと気迫を前に、あと一歩でスコアできない。普段なら難しくはない距離角度のPGを狙うも、二本とも失敗。ヒロポンもやはり緊張しているのか。結局、お互いがDFで粘り続け、「0-0」という現代ラグビーで希少なスコアでハーフタイムを迎えた。後半は強い風下となる。これは相当しんどい展開が予想された。
いったいこの藤沢付近上空にどんな現象が生じたのだろう?ハーフタイムの円陣をとき、後半開始のキックオフを待っているとき、風は変わった。なんと風向きが180度方向転換し、見事な追い風になったのだ。しかも強風。
後半開始早々からエリア合戦を完全優位に進め、ついにPG成功。「3-0」均衡を破った。あまりに風が強くキックを諦めざるを得なかった法政は怒涛のアタックを開始。攻める法政、守る横須賀。この攻防が延々と続き、ついにラスト2分となったところで、試合は大きく動いた。法政の素晴らしい気迫の前にタックルが弾かれ、この土壇場で痛恨の失トライ。コンバージョンキックは外れたが、「3-5」と逆転されてしまった。リスタートのドロップキックを蹴ったとき、時計の針は無常にも「29分」。
競って再獲得しなければいけないドロップキックが相手の胸に入ってラックを停滞された瞬間、おそらくすべての観客と法政ベンチは、法政の勝利を確信した。しかしそこで横高が偶然か意図的か作り出した状況が見事だった。ブレイクダウンに多数かけてプレッシャーを与え、ラインDFはガラガラ。法政にとっては左サイドに人数比「4-2」という大チャンス状況が生まれた。結果、ボールを動かしてくれた法政にプレッシャーをかけ、運命のホイッスルが鳴り響いた。
敵陣10mライン手前、タッチから10mで横高ボールのPK。レフリーに時間を確認すると「ラストワンプレー。(タッチに)切ったら終わり」と一言。選択肢としてはタップキックから攻めるか、届く可能性の限りなく低いPGを狙うか。29分に一度は死んだ命。一か八かのPGにすべてを託した。距離にして47m。届くとしたら正キッカーではないが当たれば飛ぶ(が、なかなか当たらない)コボちゃんだけだ。しかし正キッカーのヒロポンは腹をくくった。「俺が蹴る」。おそらく、ヒロポンをのぞくすべての見守る人々は五分五分の祈りではなく、1割程度の奇跡への祈りだったに違いない。
ヒロポンの足から放たれた楕円球は、真後ろから優しくすくい上げてくれるかのごとく奇跡的に吹く風に運ばれて、美しくH型ポールのど真ん中を越えた。
「ピー!ゴール!ピッピッピー!ノーサイド!」
たいち
『自分達のこだわっているところで勝てたのは本当によかったです。ここはずっとやって練習してきたのがやっと身を結んだんだと思いました。また、新人戦という大会ではありますが自分の憧れの代の浮津組がなれなかったベスト4になれたのが一番嬉しいです。次の慶応戦は今まで以上に楽しんで試合をしたいです。 』
ヒロポン
『試合内容はベストと呼べるものじゃなかったしなんども得点に絡むミスをしてしまった。それでも結果勝った。横須賀高校至上最高成績のベスト4。そして、自分の目標であり実は少し諦めかけていた夢。とうとうここまでこれて本当に嬉しい。BKもFWも信頼しあっていたし自分もみんなのことを信頼しあっていた。だからこの試合は勝つことができた。今はもう、いち早く次の試合をしたくてしょうがない!!最後になりますが、応援ありがとうございました。次もよろしくお願いします。 』
バンブー
『今回の試合はチームで勝利を信じきれた結果だと思います。何度もトライを取られそうになったけど我慢し続け勝つことを信じて、ひたむきにディフェンスしました。FWとしてはセットプレーでミスがあったのでそこの修正と法政のナイスタックルで何度も阻まれてスコアできなかったので、次はもっと頑張ります。 本当に勝てて嬉しいです。こんなに心の底から嬉しいと思った勝利は今までにありませんでした。 』
いっちー
『横須賀高校の最高記録に並べるかどうかがかかった試合でした。全員が一丸となって練習の成果を出し、DFすることができたことで手に入れた勝利だと思います。だけど自分個人では全く満足のいくプレーができなく、特にアタックでチームに迷惑をかけてしまいました。多くの課題は残りましたが、なにはともあれ勝てて、ベスト4入りすることができてよかったです!これに満足することなく次を見たいと思います。 』
冬休みの努力、湘南工大戦の激闘とリベンジ、1月から吹き続ける風に見事に乗った横高ラグビー部は、法政二高を下してベスト4進出を決めた。地力がついたわけではない。決して上手くも強くもない。運に恵まれた。しかし運を拾える力は養えたようだ。もちろん、湘南工大と法政二高を1トライずつに押さえたDF力は確かだ。次はいよいよ準決勝、慶應高校戦。1年生試合のリベンジのチャンス。横高伝統の激しさと気概。いざ、この追い風に乗って。
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