神奈川県立横須賀高校ラグビー部
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横須賀市セブンス優勝 『越えた崖と背後の崖』
2012/06/26
横須賀市セブンス、昨年は関東大会後の「どうせ勝てるだろ」のふわっとした雰囲気で臨み、屈辱(とシボリ)に打ちひしがれた大会。今年も関東大会圧勝優勝と前日までの修学旅行という、セブンス大会に集中し切れないコンディションの中での戦いとなった。http://yrfc.d2.r-cms.jp/topics_detail1/id=175
昨年とは違い、今年は神奈川選抜に多く選出されるほどの自慢のランナーを揃えている。どう油断しても負けるはずがない戦力条件、のはずだった。
まさかの日程衝突。この日に国体神奈川選抜のセレクション練習会が入り、セブンスの主軸となるはずだったNOジュンペー、SHリョウヘイ、CTBケンタ、FBダイキがそちらに召集。加えて、先の関東大会を一区切りに9月の大学受験に備えて勉強中心の生活に移行したチーム随一のランナー・マサシを欠く。もう片翼のWTBリョウイチも9月の進路受験に向けて勉強中心の生活を送っている。なんとかこの日だけは1週間ぶりにグランドに立つものの、コンディションがいいはずがない。
7名中5名を欠いた状況での勝負。打倒横須賀を生きがいにするかのようなライバル・横須賀総合高校が燃えに燃えていることは想像に易い。岩田組高校生活最後のセブンス大会は、そんな崖っぷちの条件で行われた。
プロップ中心に編成した横須賀Bチームが健闘むなしく敗れるのは気にならない。しかし、覇気なく敗れて下を向く横須賀2年生チームとラグビーにならずに屈辱的な敗北に沈む1年生チームが、場の空気を重苦しくする。暗い。セブンスの大会なのに、全く盛り上がらない。幸せなはずのラグビーの空間が、横須賀にとって最悪の空気となっている。
そんな中、PRジュンをキャプテンとするベストメンバーチームが勝利を重ねた。津久井浜戦は「54-7」、追浜戦は「46-7」と快勝。ジュン・カズヤ・リョウの15人制フロントトリオがバックローの如く走り回り、カズヤを軸にしたBKラインが相手を切り刻んだ。ここまでは予想通り。そしていよいよライバル・横須賀総合との決勝戦を迎えた。
戦力的には相手方が上で間違いはない。絶対的な実力を持つ主力を5/7欠いたこの大会。「そりゃー負けて当然」とすら言いたくなるが、「あいつらが全員いない中で、俺らだけでライバルを倒した」なら、それは最高の殊勲となる。
キックオフから、横須賀総合の漲る気迫に圧力をかけられる。「5-12」と7点ビハインドで折り返しただけでなく、唯一の切り札・タツヤが負傷退場。 崖っぷちの大会で訪れた更なる逆境。そんな横高を救ったのは、WTBリョウイチだった。
全員が「もうリョウイチしかない」とボールをシンプルなパス回しで託すと、ライン際を快走。3年目にしてかつてない絶妙なコース取りとスピードコントロールで相手を置き去りにする。様々な想いが宿るリョウイチの体がゴールラインを駆け抜け、歓喜の同点トライ。さらには奇跡のロスタイム逆転サヨナラ70m独走トライ。
岩田組最後の7人制大会は、主力大量不在の崖っぷちを叩き上げ素人集団が「どんなもんじゃい!」とばかりに、乗り越えた見事な優勝で幕を閉じた。
ジュン
『今回のセブンスは選抜メンバーがいない中、絶対優勝してやるという意地がありました。チームのみんなも、試合中勝ってやるという気迫を感じ、気持ちが一つになっていました。なのでチーム全員で走りきることができた試合でした!』
リョウイチ
『まず、優勝できてよかったです。去年は決勝で横須賀総合とあたり、負けて準優勝で悔しくて、今回屈辱を晴らせたこともよかったです。また、オールに選ばれた奴らがいなくても、戦えるってことを示せたと思います。あと、今までやってきたトレーニングが間違ってなかったとも思えました。決勝戦はその日、3試合目でしたが最後まで走り抜くことができました。これから夏に入ってもトレーニングを続けていれば強くなっていけると、実感がもてたと思うので、頑張っていきたいと思います。』
俊輔
『セブンス大会。始まる前はかなり正直不安でしたが、県選抜組抜きの3年生だけで構成されたチームで ちゃんと結果を残せたのは良かったです。優勝できたのが本当に嬉しくて、ノーサイドの瞬間は今でも忘れないられないです。プレーもやろうと思っていた事はできたので、更に上のレベルを目指して 練習に取り組んでいきたいです。』
ただし、決してハッピーエンドの大会ではなかった。もう一つの崖は、1・2年生が抱える問題だ。現時点での力の無さよりも、「敗戦に対する意識の軽さ」と「危機感の無さ」。横須賀総合に敗れた2年生チームは、落胆した顔を並べて地べたに座り込むばかり。そのうち「やってます」程度のスクワット。横須賀が横須賀総合に敗れる意味の重さが全く分かっていない。シボリを強要されない限り、自主的に1周走を始めることもなければ生タックルもしようとしない。「落ち込んだフリ」「トレーニングしているフリ」、悔しさが溢れ出る気配は全くない。おそらく、たいして悔しい気持ちを持っていない。こんな2年生の空気が1年生にもそのまま伝染。これは組織の根幹を揺るがす重大な問題だ。
3年生に挑む気配が全く感じられないことは、以前から気になっていた。本気でポジションを奪いにいっていない。グランドで3年とケンカする迫力など微塵もない。戦術構成も練習構成もゲームメイクも、ただ3年生にくっついているだけ。引退待ち、順番待ちのレギュラー獲得には何の意味もない。
時間が有限性を帯びた3年生にとっては、1日の過ごし方や1回の練習が二度とない勝負となる。しかし2年生にとっても、来る日は確実に近づいている。その時になって過去の1年半を惜しんでも危機感を持ってもすでに遅い。一刻も早く、背後にある崖の存在に気づき、変わらなければ・・・。
JコムTVの「夕なび」で、「横須賀高校ラグビー部 関東大会の軌跡」と題した特集(17分)を放映してもらいました。
ケンタ・マサシ・リョウイチ・シュンペイの4人にスポットを当て、関東大会の様子、授業風景などがぎっしり詰まった作品となりました。
「夕なび」に特集してもらったのは、この1年で3度目となります。Jコム様、本当にありがとうございます!
ラグビーマガジン8月号の巻頭コラム「ダイハート」に掲載してもらいました。
写真は関東大会決勝戦のタツヤです。藤島大さん、ありがとうございました!
昨年とは違い、今年は神奈川選抜に多く選出されるほどの自慢のランナーを揃えている。どう油断しても負けるはずがない戦力条件、のはずだった。
まさかの日程衝突。この日に国体神奈川選抜のセレクション練習会が入り、セブンスの主軸となるはずだったNOジュンペー、SHリョウヘイ、CTBケンタ、FBダイキがそちらに召集。加えて、先の関東大会を一区切りに9月の大学受験に備えて勉強中心の生活に移行したチーム随一のランナー・マサシを欠く。もう片翼のWTBリョウイチも9月の進路受験に向けて勉強中心の生活を送っている。なんとかこの日だけは1週間ぶりにグランドに立つものの、コンディションがいいはずがない。
7名中5名を欠いた状況での勝負。打倒横須賀を生きがいにするかのようなライバル・横須賀総合高校が燃えに燃えていることは想像に易い。岩田組高校生活最後のセブンス大会は、そんな崖っぷちの条件で行われた。
プロップ中心に編成した横須賀Bチームが健闘むなしく敗れるのは気にならない。しかし、覇気なく敗れて下を向く横須賀2年生チームとラグビーにならずに屈辱的な敗北に沈む1年生チームが、場の空気を重苦しくする。暗い。セブンスの大会なのに、全く盛り上がらない。幸せなはずのラグビーの空間が、横須賀にとって最悪の空気となっている。
そんな中、PRジュンをキャプテンとするベストメンバーチームが勝利を重ねた。津久井浜戦は「54-7」、追浜戦は「46-7」と快勝。ジュン・カズヤ・リョウの15人制フロントトリオがバックローの如く走り回り、カズヤを軸にしたBKラインが相手を切り刻んだ。ここまでは予想通り。そしていよいよライバル・横須賀総合との決勝戦を迎えた。
戦力的には相手方が上で間違いはない。絶対的な実力を持つ主力を5/7欠いたこの大会。「そりゃー負けて当然」とすら言いたくなるが、「あいつらが全員いない中で、俺らだけでライバルを倒した」なら、それは最高の殊勲となる。
キックオフから、横須賀総合の漲る気迫に圧力をかけられる。「5-12」と7点ビハインドで折り返しただけでなく、唯一の切り札・タツヤが負傷退場。 崖っぷちの大会で訪れた更なる逆境。そんな横高を救ったのは、WTBリョウイチだった。
全員が「もうリョウイチしかない」とボールをシンプルなパス回しで託すと、ライン際を快走。3年目にしてかつてない絶妙なコース取りとスピードコントロールで相手を置き去りにする。様々な想いが宿るリョウイチの体がゴールラインを駆け抜け、歓喜の同点トライ。さらには奇跡のロスタイム逆転サヨナラ70m独走トライ。
岩田組最後の7人制大会は、主力大量不在の崖っぷちを叩き上げ素人集団が「どんなもんじゃい!」とばかりに、乗り越えた見事な優勝で幕を閉じた。
ジュン
『今回のセブンスは選抜メンバーがいない中、絶対優勝してやるという意地がありました。チームのみんなも、試合中勝ってやるという気迫を感じ、気持ちが一つになっていました。なのでチーム全員で走りきることができた試合でした!』
リョウイチ
『まず、優勝できてよかったです。去年は決勝で横須賀総合とあたり、負けて準優勝で悔しくて、今回屈辱を晴らせたこともよかったです。また、オールに選ばれた奴らがいなくても、戦えるってことを示せたと思います。あと、今までやってきたトレーニングが間違ってなかったとも思えました。決勝戦はその日、3試合目でしたが最後まで走り抜くことができました。これから夏に入ってもトレーニングを続けていれば強くなっていけると、実感がもてたと思うので、頑張っていきたいと思います。』
俊輔
『セブンス大会。始まる前はかなり正直不安でしたが、県選抜組抜きの3年生だけで構成されたチームで ちゃんと結果を残せたのは良かったです。優勝できたのが本当に嬉しくて、ノーサイドの瞬間は今でも忘れないられないです。プレーもやろうと思っていた事はできたので、更に上のレベルを目指して 練習に取り組んでいきたいです。』
ただし、決してハッピーエンドの大会ではなかった。もう一つの崖は、1・2年生が抱える問題だ。現時点での力の無さよりも、「敗戦に対する意識の軽さ」と「危機感の無さ」。横須賀総合に敗れた2年生チームは、落胆した顔を並べて地べたに座り込むばかり。そのうち「やってます」程度のスクワット。横須賀が横須賀総合に敗れる意味の重さが全く分かっていない。シボリを強要されない限り、自主的に1周走を始めることもなければ生タックルもしようとしない。「落ち込んだフリ」「トレーニングしているフリ」、悔しさが溢れ出る気配は全くない。おそらく、たいして悔しい気持ちを持っていない。こんな2年生の空気が1年生にもそのまま伝染。これは組織の根幹を揺るがす重大な問題だ。
3年生に挑む気配が全く感じられないことは、以前から気になっていた。本気でポジションを奪いにいっていない。グランドで3年とケンカする迫力など微塵もない。戦術構成も練習構成もゲームメイクも、ただ3年生にくっついているだけ。引退待ち、順番待ちのレギュラー獲得には何の意味もない。
時間が有限性を帯びた3年生にとっては、1日の過ごし方や1回の練習が二度とない勝負となる。しかし2年生にとっても、来る日は確実に近づいている。その時になって過去の1年半を惜しんでも危機感を持ってもすでに遅い。一刻も早く、背後にある崖の存在に気づき、変わらなければ・・・。
JコムTVの「夕なび」で、「横須賀高校ラグビー部 関東大会の軌跡」と題した特集(17分)を放映してもらいました。
ケンタ・マサシ・リョウイチ・シュンペイの4人にスポットを当て、関東大会の様子、授業風景などがぎっしり詰まった作品となりました。
「夕なび」に特集してもらったのは、この1年で3度目となります。Jコム様、本当にありがとうございます!
ラグビーマガジン8月号の巻頭コラム「ダイハート」に掲載してもらいました。
写真は関東大会決勝戦のタツヤです。藤島大さん、ありがとうございました!
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