神奈川県立横須賀高校ラグビー部
早稲田の英雄がくれたもの
2014/03/09
本稿の題名が思いつかない。表現力が追いつかない。それほどの人物たちが横高グランドに集ったのだから。テスト休み明けの3月8日、日本選手権を終えた早稲田大学ラグビー部の英雄たちが、はるばる横須賀高校の練習に来てくれた。
もともとは柏陽監督時代の教え子である荻野岳志選手にいつものように(過去3回参加)お願いしたもの。荻野選手は今やU20日本代表の不動のWTBとして国際大会で活躍し、早稲田でも絶対的エースとなっている。大学選手権決勝では3トライという圧巻の活躍。ラグビーマガジンどころか週刊現代にも特集されるほどの存在だ。
その荻野選手が早稲田の新チームキャプテンに就任したばかりの大峯選手(実は私にとって東筑高校の遠い後輩)に声をかけ、2人で来てくれることになっていた。ところが当日朝になって荻野選手からメールが届き、他にもう2人の名前が書かれていた。それを見て、あまりの衝撃だったが部員には誰が来るか秘密にしておいた。
13時30分、グランドの現れた人物を目にしたとき、部員たちの目は見開き、口元は大きく緩んだ。「マジ?マジで?」。
この横須賀高校のグランドに、早稲田大学ラグビー部前キャプテン・垣永真之介選手(春からはサントリーに入社)が立っているのだから。もう一人、昨シーズンは完全にアカクロメンバーに定着したプロップ・光川選手(公文国際学園出身)を加え、4名の英雄たち(新旧の両キャプテンが揃う!)との夢のような3時間が始まった。
前半は基本練習。いつも通りのブレイクダウンの練習に入ってもらい、ボールキャリー、スイープ、ハンマー、ショートステップなどについて、それは丁寧かつ端的なコーチングを受けることができた。特にスイープとハンマーの解説は素晴らしかった。これは私があとちょっとコーチングの現実感に確信が持てなかったプレー。近年のルールとプレーの変容にマッチした最新の考え方もふんだんに含まれており、コーチとして本当にありがたかった。
中盤はチームDF。大峯選手と光川選手はアタック役に入ってもらい、垣永選手と荻野選手はAチームの背後からDFの動きと判断を入念にチェック。FWは垣永選手、BKは荻野選手からそれぞれ明快なコーチングを受けた。
後半はFWBK分かれ。FWはスクラム、BKは荻野選手からWTBのステップやスキル、判断などのコーチングを受けた。FWはスクラムを徹底的に修正してもらいながら、全ポジションが考えるべきことを教えてもらった。垣永選手の熱いコーチングには、大きく心を揺さぶられた。
テレビで見ていた通りの熱く情深く爽快な振る舞い。誰より大きな声を出し続け、生徒がいいスクラムを組んだときは、TV画面でいつも目にしていた通り、「ナァーイス!!」の大声で一人ひとりとハイタッチ。タフなはずのスクラム練習なのに、これほどまで心躍る状態に導かれるとは。その人柄に対して、ただ敬服するしかなかった。
BKは荻野選手が何を考え、どうステップを切っているかまで具体的に教えてもらった。JAPANのWTB・福岡堅樹と対峙した大学選手権準決勝に、何を意識して福岡選手にDFしたのかまで、具体的に説明してもらうことができた。
練習終了後、4人は最後まで気さくに部員たちとのおしゃべりし、早稲田のウェアなどをプレゼントしてくれた。持ってきたものだけでなく今身につけている物までもプレゼントしてくれるものだから、垣永選手は自ら上下スパッツのみの半裸状態・・・。4人の優しさと真剣さに包まれた3時間が終了した。
垣永選手(リハビリ中の選手にもナチュラルにこの気遣い!)
「今日はありがとうございました。みんなと一緒に自分も成長することができました。横須賀高校の選手は、みんなやらされる感が全くなく、好きでラグビーをやっているのは強く伝わってきました。ここまでラグビーを好きになれるのはすごいなと感心しました。応援しているので、これからも頑張ってください」
大峯選手
「今日はありがとうございました。この機会をくれた荻野に感謝します。横須賀の選手はみんな真面目で、こちらが言ったことを素直にやってくれました。これは生きていくうえでも必要なことだし、ラグビーが上手くなるためにも本当に大切なことです。法政二高ではなく桐蔭を倒すと言えるチームになってほしいなと思います。」
光川選手
「本日はありがとうございました。やっぱり勝たないと面白くないので、勝つことにこだわって頑張ってください。横須賀の選手は本当に素直にこちらが言ったことをやってくれるので、教える方も嬉しかったです。また是非参加させてください」
荻野選手
「本日はありがとうございました。質問などもホントに積極的で、すごいラグビーが好きなことが伝わってきました。早稲田に入って感じたことですが、思ったより桐蔭や慶應の選手と個人的な差はありません。だから諦めないで大学ラグビーにも挑戦してほしいなと思います。是非早稲田に来てください。」
ジュン
「正直、垣永さんが来てくれたときには驚きました。早稲田の皆さんは面白くて、わかりやすく教えてくださったので、とてもいい練習になりました。本当にありがとうございました」
ユウタロウ
「本当にテレビでしか見たことのない大学のトップの選手が来てくれて、言っていることすべてが自分にとってプラスになることばかりで本当に充実した時間を過ごせました。教えてもらったことをしっかりと生かしてこれから頑張っていきたいです。」
トオル
「とても充実したいい一日になりました。素晴らしいプレーヤーが来てくださったことでモチベーションもいつもより高まり、知識・技術ともに成長できたと思います。大学トップレベルでの意識する点や感覚を教えていただいたので、これからのレベルアップにつなげていきたいです。」
アキヒコ
「今回、早稲田大学の選手が来てくださると聞いて前日からとてもわくわくしていました。1つ1つの練習の中でアドバイスを頂いてその都度自分の中で少しずつ上手くなっていることを実感することができました。これからは今日、教わったことを自分のものにして試合でつかえるようになりたいです。」
早稲田新・旧両キャプテン at 喜よし食堂
練習後、「横須賀高校の選手たちはラグビーが好き」と何度も口にしてくれた。指導者として本当に嬉しい気持ちだったが、「皆さんと時間を共有した今日、この3時間の最中にラグビーがもっと好きになった」もまた、絶対に真実だ。「ラグビーが好きだ」という想いの強さ。教えて育つものでもない最も大切なものを、早稲田の英雄たちから与えてもらった。
早稲田の皆さん、本当にありがとうございました!打倒帝京と大学日本一奪取を横高ラグビー部一同、心から願い応援しています!垣永さん、サントリーでの活躍とJAPAN入りを祈念しています。荻野、いつも本当にありがとうね。
追記
その翌日日曜日、受験を終えた伊藤組と岩田組がたくさん練習に参加してくれました。早稲田の皆さんから教わったことの定着を意識し、先輩たち相手にさっそく実践と反復。本当に助かりました!ありがとう!
みんなの力が必要です!どんどん後輩に胸を貸しにきてください!
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