神奈川県立横須賀高校ラグビー部
『実験の夏』 『1年目の夏』
2014/07/23
関東大会、セブンス、期末試験を終え、いよいよ津田組最後の夏が始まった。県大会準決勝で体感したターゲットとの力差を考え、今までの「ベスト8を狙うラグビー」から、大きく脱却する必要がある。今の戦力でいかなる戦術を取ればトップ3相手に勝機は生まれるのか、期末試験休み中にストラテジー班と一緒に、考えに考え抜いた。
仮説は立った。そうして生まれたアイデアを机上の論のまま信じるのではなく、実験と検証を重ねて「これを貫けば勝機あり」という確信に至るまで磨き上げる必要がある。これから8月8日の菅平入りまでの期間の目標は、そんな「実験・検証・確立」。その一歩目となる2試合が行われた。
7月12日、相手は湘南高校。例年のタッチフット大会で分かる通り、勉強だけでなく運動もできる優れた若者が集うチーム。こういうチームは練習試合から手を抜かず全力で戦ってくれるから、公式戦と同じ厳しさが生まれる。そんな期待をもってゲームに臨んだ。
期待通りか、期待以上か。キックオフ前の円陣で湘南高校が叫ぶ。「相手は県4位だぞ!絶対倒すぞ!」これからはそういう目で相手は横須賀を見ているのかと、あたためて再確認させられた 。
15分×4のゲームで、ちょうど4つの戦術を試した。漠然と戦って勝っても意味はない。意識を強く持ち、それぞれの戦術候補を貫こうとした。最終スコアは「57-7」。検証完了とは言えないが、次戦にはある程度「答え」が出せそうな経験となった。
続く1年生試合では、コウダイとリュウカという巨頭を欠くメンバー構成だったが、キヨトのビッグタックルやユウトのWTB顔負けの切れ味鋭いランなど、大きな収穫を得ての勝利となった。
7月19日、相手は川和高校。この4月から優秀な顧問が赴任し、これから打倒横須賀を掲げようとしているチーム。顧問の名は後藤悠太。桐蔭学園→早稲田大学→リコーというラグビーエリート街道を突き進み、この4月に神奈川県に県立高校教諭として採用された。いつも比較される兄はあの後藤翔太だ(桐蔭→早稲田で日本一→神戸製鋼。JAPAN経験あり。私的にはタマリバ時代に日本選手権で対面!)
1ヶ月ほど前に、若き後藤監督からこうリクエストを受けた。
「これから1ヶ月は打倒横須賀に燃えて練習をします。選手を本気で勝ちにいく気にならせます。そんな川和を、どうか木端微塵に粉砕してください。その敗戦を新生川和のスタートラインにしたい」
そんな気鋭の若者の期待。川和の選手たちは覚悟のファーストジャージで登場。我々にできることは、敬意をもって粉砕するだけだ。と同時に、自分たちのゲームのターゲットも忘れてはならない。前週の湘南高校戦同様、15分×4にしてもらい、再び4つの戦術を実験的に使い分けた(4本目はB相当にメンバーを落としたので型も何もなかったが)。
新しいDF方法にも挑戦したため、安易なマークミスでトライを奪われたが、概ね圧倒して「78-21」で勝利。4つの戦術のうち、どれを軸に考えるべきか定めることができた。
練習試合ながらコウダイやリュウカではない1年生4人がAのゲームに出場することができたのも大きな収穫だろう。
ケイスケ
『湘南戦と川和戦はいいプレイをできた場面もありましたが、それ以上にBDで圧倒しきれないなどの反省点も多く自分のプレイヤーとしての課題が明確になりました。なので、その課題をこれからの練習で克服していきたいです。』
ジュンキ
『アタックではカバーDFとの1対1に勝って確実にトライをとることができたので良かった。しかし、ディフェンス面には多くの課題が残ってしまったのでこれから改善していきたい。』
拓未
『チームとして新しい戦術に挑戦している途中で、なかなかプレーがうまくいかずに戸惑う部分が多くて、なかなか自分の長所を出せることが出来ませんでした。また、個人として新たな課題も生まれたので、これからの夏の練習で克服できるようにしたいと思います。』
ユウト
『この湘南戦は自分にとって、ラグビーの本当の面白さを体感した試合になったと思います。自分から進んで声を出しボールを受けて勝負できたことや、練習でさえ上手くできていなかったステップが綺麗に切れたことでものすごく自信になりました。「走れるFW」目指して頑張ります!
川和戦では、初めて上級生の試合に出場ということでとても緊張しました。試合の中でのボールの動きが速くて、レベルの高さを肌で感じました。早くそのレベルについていけるよう努力し、通用する選手になりたいです!』
実は戦術パーツとしてもう2つほど試したいことがあった。川和戦の翌日、ありがたいことに、稲垣組・岩田組・伊藤組のOBがグランドに集い、胸を貸してくれた。2つの追加パーツもOBのおかげである程度検証できた。
湘南戦、川和戦、OBとのアタックディフェンスを通じて、仮説・実験・検証の第一段階を終えることができた。次は強豪校相手に第二段階の実験と検証を重ねる。来週は東京の強豪校との合同練習が2つ組まれている。この2回で磨いた戦術で、いよいよ聖地・菅平入りすることになる。
左から、大塚(稲垣組)、稲垣、金本(岩田組)、岩田、丸山(岩田組)、住浦(伊藤組)、若原(伊藤組)
梅雨が明け、暑く熱い夏が訪れた。1年生にとって3年間で最もしんどいのが夏休み最初の2週間だ。逃げたくなるだろう、心も体も重くなるだろう。先輩たちだってみんなそうだった。どうかここを乗り越えて欲しい。今こそ同学年の絆を頼りに、しんどいのは自分だけじゃないと言い聞かせ、一人ではなく同期みんなでこの期間を乗り越えて欲しい。
聖地・菅平の合宿は、自分の人間としての感性と幅を大きく広げてくれる。山を下りたら、見えなかったものが見えるようになる。何より己への自信がつく。自信がつけば、いよいよ楽しくなる。楽にもなる。
そうしているうちに秋が訪れ、津田組の最後の瞬間を迎える。きっと見たこともない光景を目の当たりにする。感情が激しく揺さぶられ、大きく一歩、大人の男へと近づくだろう。その瞬間から、また新しい感性で新しい景色が広がるようになる。
まずは合宿までの期間、強がって上を向き、先を見ずにその日一日の戦いに懸け、同期と一緒に「今日も何とか乗り越えたな」と疲労と安堵の笑いを浮かべながら帰ればいい。翌朝、気分も足も重くとも、「1年生のみんな、きっと同じだよな」と鉛の体を動かす気概を見せて欲しい。
いろいろ書いたが、最後にシンプルに一言。 頑張れ!!
アフターファンクションで坂東武者斉唱。
お返しとして、湘南高校はハカを披露!
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