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セブンスシリーズ終了 『ステージから見た景色』

2015/06/23

 セブンス(7人制ラグビー)。オリンピック種目採用に伴い、昨年から全国大会がスタートした。しかし昨年は津田組の特性からも、正直全く興味がわかず三日と練習をしなかった。そんなセブンスに、今年は1ヶ月半も集中して強化を行った。
  宇野組はキャプテンのアキヒコだけでなく、ジュンキやカズヒロなど、パワーに不足はあるもののセブンスに最適な能力が揃っていた。タツヤのいびつで特異な能力も、セブンスではまれば爆発する可能性がある。セブンスだけを考えるなら、宇野組が「勝負の年」と言っていいだろう。

 そして、そんなタレントを引き上げるコーチングについては、最高級のものがすぐ近くに存在した。一つは「荻野岳志」。柏陽監督時代の教え子。元早稲田のエースとしてエディーJAPANの候補合宿に呼ばれただけでなく、実はセブンスJAPANの合宿にもこの春に呼ばれたばかりの選手だ(早稲田→三菱商事)。JAPANの持つセブンス理論をすべて吸収したばかり。スポットコーチとして何度も横高に来てくれている彼に手伝ってもらわない手はなかった。

 そしてもう一つは、「福田恒輝」という人間。私は彼を国内最高レベルのセブンス理論を持つ人間だと確信している。もともとは早稲田のスタンドオフ。学年は一つ上だったが、早稲田やタマリバクラブで何十試合もハーフ団を組んだ仲だ。
 ラグビー理解と物事の考え方、人生を変えるほど大きな影響を与えてくれた尊敬する人物。実は前述の荻野選手も、指定校で柏陽から早稲田に進学が決まった瞬間、「早稲田ラグビーに入部する前にこの男の下で修業しなさい」と、タマリバクラブのセブンス専門チームのリーダー・福田恒輝に預けた。荻野選手の人生を変えたのは、入部前のこの数か月間だと思っている。タマリバの(福田さんの)セブンス理論は独自性が強く、何年もの試行錯誤を経て洗練されたものだ。
 
 勝負できる人材、最高峰のコーチング。目標は「優勝して全国出場」に定めた。15人制の目標は「ベスト8入り」だが、「セブンスなら何か起こせるかもしれない」の気持ちを持つことができた。
 GWの7人制県総体では生田、合同、平塚学園を圧倒した。湘南工大や平塚学園との合同練習も全てセブンスにしてもらった。福田さんに一日監督になってもらい、タマリバとのゲームも行った。市大会ではセブンスの恐ろしさを味わい、痛すぎる授業料を払うこととなったが、とにかく準備をして県セブンスに臨んだ。

 1回戦は合同A、2回戦は追浜と対戦した。前週の反省を生かし、集中して自分たちのベストを尽くして「63-0」と「41-0」で勝利。上々のスタートとなった。
 2日目、いよいよシード私立との対戦。相手は日大高校。タレント集団であることは毎年のこと。異次元の実力を持つエースを中心に、速さ、高さ、上手さを兼ね備えたチームだ。

 開始からずっと日大ペース。急に強度の上がった相手を前に、ブレイクダウンでペナルティーを連発。反則ばかりで攻める形が一向にできない。一つ、また一つとトライを献上してしまった。後半も半分が経過したところで、「勝負あり」の4トライ目を許してしまう。残り約3分、「0-20」となったところで、両チームがメンバーを変えた。「もう勝敗は決したので・・・」、観客やベンチ含めて誰もがそう思っていた。ここから流れが激変するとは、誰も想像できなかった。

 ラストプレーの鐘が鳴るまで残り約100秒。タツヤが足腰の強さを見せ付けてトライ。すぐにドロップゴールを決めて「7-20」。残り30秒、またもタツヤのロングランを基点に、ジュンキが抜け出してトライ。すぐにドロップゴールを決めて「14-20」。この瞬間に残り0秒、「切れたら終わり」を意味する鐘がなった。

 誰もがレフリーに注目した。実は前日、ドロップゴール後に鐘が鳴った場合に、試合終了の笛を吹くレフリーとラストワンプレーのリスタートを認めるレフリーの両方が存在した。「終わりか」「ラストワンプレーか」正式なルールは誰も分かっていなかった(私も)。レフリーはラストワンプレーを認めるように試合を継続した。「鐘が聞こえなかったのか?」の声が本部から出ていた。

 そんな状況で始まったロスタイム。連続攻撃の後、ラインブレイクしたコウダイがインゴールに飛び込んだ。ゴールも成功。観客の感覚なら「あれ?まさか?」か。トライ数は「3-4」だが、スコアは「21-20」。横須賀が上回っている。トライ数「0本-4本」だった残り100秒からの、まさに奇跡の大逆転劇。

 ノーサイドの瞬間、グランド上は喜ぶ姿もあれば、「まさか逆転してる?」という疑問の顔、負けたと思い込んで落胆する姿も。信じられない展開に明らかに混乱していた。大会本部も「鐘が鳴ったのにゲームを続けての逆転。これはどうなんだ?」の議論で混乱していた。
 「ドロップゴールの後の鐘は、ラストワンプレーとしてゲームを続ける」のIRB基準が試合後にレフリーと大会本部で確認され、大逆転劇は揺るがぬ事実となった。


 全国大会まであと2つ。準決勝の相手は慶應高校。宇野組にとっては初めて体験するベスト4のステージ。
 残念ながら、日大との死闘でコウダイが負傷リタイヤ、キックオフ直前の体調不良によりジュンキがリタイヤ。カギを握る主軸2枚を欠き、ポジションも大きく変わってぶっつけ本番の布陣。やりたいセブンスができなかった。自信と経験に裏付けられた慶應の懐深いプレーを前に、準備してきた力を出し切れず「14-33」でノーサイド。宇野組のセブンスの旅は終わった。


 全国出場はならなかったが、宇野組としては初めての準決勝のステージに立つことができた。セブンスとはいえ公式戦で日大高校を破ったのは、いったい何年ぶりだろうか?(私の知る7年間は勝利なし。あの岩田組ですら悲劇の大逆転で敗れた) 最後は不完全燃焼に近い感覚で終わってしまったが、個人としてもチームとしても収穫の大きな期間となった。
 準決勝というステージから見た景色。思い出ではなく、次への原動力にしたい。
http://yrfc.d2.r-cms.jp/topics_detail1/id=199 (岩田組vs日大高)



アキヒコ
『関東予選が終わり、ずっとやってきたセブンスも終わりました。練習を重ねるにつれ、目に見えて成長を感じてきました。いろいろな合同練習を重ね、迎えた横須賀セブンスでは屈辱を味わいましたが1週間後の全国予選では今まで練習してきた実力を発揮できたと思います。そしてシード校の実力を身をもって感じれたことはとてもいい経験になりました。秋の花園予選に向けてこれからも努力していきます。』

マコト
『(この1ヶ月半体作りに専念している)他のFWにフィジカルで遅れをとった以上のスキルアップは十分にできたと思います。特にDFスキル、飛び込まない癖、きつい時のメンタルを個人的に伸ばせたと思います。セブンスをやって対ジャッカルスイープなど、15人制でも必要なスキルの課題もはっきりして良かったです。』
 
ジュンキ
『一ヶ月以上の長い期間、セブンスの練習をすることによって新たな課題が見つかったり、スキルの向上につながったと思うので良かったです。また、セブンスとはいえシード校を破ることができたのはチームにとって大きな経験だと思います。この経験を生かして、秋に向けてチームも個人ももっと成長していきたいです。』
 
タツヤ
『今回の大会を通してとても良い経験ができたと思います。試合では多くのミスをしてしまい、チームに迷惑をかけてしまったのですが、取り組んできた練習、そして仲間を信じきれたことが逆転につながったと思います。また、自分がシード校相手に通用したもの、通用しなかったもの、まだまだ個人として足りないものなど多くの収穫が得ることができました。これから最後の大会に向けて今回の大会で見つかった課題を修正してステップアップしていきたいです。』

カズヒロ
『本当に濃い1ヵ月半でしたが、セブンスをここまで本気でやれたのは初めてで、目標は全国大会でしたが、県ベスト4という結果に宇野組として初めて立つことができたのは、これからの自信につながると思います。準決勝の慶應戦は完全にフィジカルで相手が勝っていたけど、その中で通用したところもあったので、そこを伸ばすと共に体作りをして、最後の花園予選まで悔いの残らない過ごし方をしたいと思います。』

 
 大会後は期末試験休み。そしていよいよ、宇野組最後の夏が始まる。その幕開けは、「関東エリアで最も負けたくない相手」との対戦。同じように文武両道の日々を送り(あちらの方が学力は遥かに上だが)、高い入試のハードルゆえに経験者はごく少数、勧誘して入れた一般部員を育て上げて強豪校に挑む県立の超進学校。一昨年にはついに花園出場を果たし、メディアの大注目を浴びた。そう、埼玉県立浦和高校だ。

 4年前に立教大学ラグビー祭の招待試合では横須賀稲垣組が勝利、昨年の関東大会では同じブロックながらも対戦は実現せず(Gブロックで横須賀津田組が2位、浦和が4位)、3月に本郷高校グランドで30分1本を戦ったときには、宇野組は完敗を喫した。
http://yrfc.d2.r-cms.jp/topics_detail1/id=176 (稲垣組vs浦和)

 7月19日、練習試合だがファーストジャージで浦和高校に挑ませてもらう。
 熱い夏が幕を開ける。



隠れMVPは択海。日大戦、独走トライの相手選手を逆サイドから80m以上追いかけ続け、ポスト正面へのトライを阻止した。あのプレーがなければ負けていた。
 

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