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塩島組始動 『Independence』

2015/11/17

 宇野組の敗戦から2日後の10月26日、新チームが始動した。例年通り、引退する宇野組と私が話し合い、キャプテンを指名。満場一致で選ばれたのは、コウタロウ(PR3)だ。宇野組のときからすでにリーダー的存在。冷静な頭脳と鋭い洞察力でFWを牽引していた。プレー、頭脳、統率力、カリスマ性を全く感じさせない?親しみやすい人柄、リーダーとしての十分な資質を持つ男だ。

 バイスキャプテンはシュウヘイ(SO)。ラグビーの巧さは昨季から超一級品。ラグビー理解や研究心も十二分だが、あまりに優しすぎる性格が能力の発揮を妨げていた。絶対的リーダーであったアキヒコがいなくなった塩島組では、シュウヘイがゲームを統率することになる。日常からリーダーとしてプレーではなく言葉でチームを引っ張ることができれば、本来の能力もさらに発揮できるようになるだろう。
 
 この代の特徴は「まとまりが抜群に良い」ことだ。1年生初夏に大量退部者が出たことで、今は11人(選手9名MG2名)しかいない学年。仲間と思っていた存在が次々に辞めるという苦しみを耐え抜いて今に至る。そんな過去を経て築き上げたその仲の良さは自分たちでも誇りであり強みと自覚している。アキヒコという飛び抜けた存在が象徴するように、いびつな個性がわが道をゆきつつも不思議なバランスを保っていた宇野組とは、ある意味対照的な学年だ。

 チームの目標設定、宇野組との戦力比較と分析、戦術の検討と確定、個人の自己分析と目標設定、班の編成、リーダーの決定、アイデアシートの作成、度重なる班ミーティングなど、今年も入念な準備を重ねてのファーストミーティング。全ての班から新しい取り組みについて熱を帯びた発表が行われた。
 
 新チームが掲げた目標は昨年通り「ベスト8」。しかし、この目標が「くじ運」という非常に不確かなものの影響を受けすぎることは、宇野組で嫌というほど味わった。彼らはおそらくベスト8の下位であれば差をつけて倒せる実力を持ちながらも、「くじ運」というヤツから最後まで見放されていた。
 揺るがないゴール、運に左右されない定まった目標が欲しい。そこで塩島組が設定した目標は「県5位相当のチーム(昨季なら法政や日大)を倒す」というもの。ここを最終的な実力到達目標とした。
 そしてもう一つの目標が、「多くの人から応援されるチームになる」ことだ。そのためには何をやるべきか、どう振る舞うべきか、どう生きるべきか。この目標があれば、日常のあらゆる場面で答えはおのずと見えるだろう。

 
 最後に、新チームのスローガンが定まった。塩島組のスローガンは『Independence』。和訳すると『独立』『自立』。
アキヒコのような絶対的リーダーも、ジュンキのような絶対的エースもいない塩島組だからこそ、誰かに依存せずにそれぞれが考え、意見を持ち、独立した個人としてチーム作りに参加しなければならない。仲が良い学年だからこそ『依存』や『共同』ではなく、集合体が大きな力を生み出すために、あえて『個の独立』が必要なのだ。
 
 そしてこのスローガンの最大かもしれない意味。それは『監督(松山)からの独立宣言』であることだ。横高に赴任し、熊坂組ではほとんど全てのことを破壊して創造した(熊坂組の苦労と根性と努力に敬服)。稲垣組・岩田組・伊藤組・津田組では、色々な方向からいい意味でだが『教祖』と言われ、ほとんど絶対的存在だった。
 しかし、伊藤組と津田組では進化に壁を感じ、「自分自身が変わらなければ」の思いは年ごとに強まった。宇野組ではアキヒコというリーダーがいたため、権限の多くを委譲した。グランドやミーティングでは、昨年までの10倍以上は自分たちで考える機会を与えた。それでもいざ大切な局面になると「悩む前に答えを教え」「与えた模範解答にどれだけ近づけるか」の枠から出ることができなかったと思っている。

 慶應との最終戦、「力をほとんど出し切れずに大敗」という目に遭わせてしまった。これはその代の最終戦としては、私の指導歴で初めてのことだった。客観的に考えれば(上級生9人ということからも)戦力がダウンする今年、私が変わらなければ、順当なる下降が必然だ。 
 かつての代でも何度か口にしてきた単語『自立・自律』では、何だか弱い。そう思っていたところに、選手たちからスローガン案として数多く上がってきた単語が『Independence 独立』だ。一直線に的を射ぬかれた。
 
 
コウタロウ(新キャプテン)
『新チームのキャプテンに選ばれました、塩島です。伝統ある横須賀高校ラグビー部のキャプテンに選ばれたことに強い責任を感じています。
 自分にはアキ先輩のようなリーダー性はなくまだまだ至らないところもありますが、自分が毎回の練習やウェイトを一番率先して意欲的に取り組むことでチームを引っ張っていきたいと思っています。また、偉大な先輩方が抜けたことで、今まで以上に一人一人が意見と責任を持つチームを作らなければならないと感じています。全員が常に目的意識を持って一日一日を大切にしていきます。
 宇野組からの目標であるベスト8を今年こそ達成するためには一年という期間はとても短いものだと思います。宇野組の最後の瞬間を全員が一度も忘れることなく、目標に向かって覚悟を持って努力して行きます。
 最後になりましたが、OBの方々や保護者の皆様への感謝を忘れることなく、結果で恩返したいと思います。応援よろしくお願いします。』
 
シュウヘイ(バイスキャプテン・ストラテジー班リーダー 中央右) 
『塩島組は、これまで以上に一人一人がチームに関わり、全員でチーム造りを進めていく事になります。宇野組の偉大な先輩方のいない穴は大きくまだまだ不安もたくさんありますが、キャプテン塩島を中心にチーム一丸となって自分たちのラグビーを築いていきたいと思います。
 テーマである「Independence」に恥じないよう、人間として自立して、自分に与えられた使命を果たすことができるよう、日々努力していきます。応援よろしくお願いします。』
 
コウヘイ(主務・モラル班リーダー 中央右)
『試合でのメンタルは私生活やグラウンドでのモラルが出るので、今年は昨年のモラルの良いところは継続し、悪いところは修正して全体として向上させます。また、昨年は一人一人のモラルの差があったので、今年は無くします。個人としては行動で示し続けます。』
 
ユキヒロ(ストレングス班リーダー 中央左)
『このチームは小柄でパワーにも欠けていますが、持ち前のスピードを活かし、その両方を兼ね備えるという構想が僕の頭の中にあるので、それをこれから実現させていきます。』
 
タイガ(パッション班リーダー 中央)
『今年のパッションは「バカ」をテーマに掲げています。毎年、一年生などの下級生は上級生に遠慮して、声を出しにくいと感じているようで、この状況を改善するには「バカになる」ことが何より大切だと考えました。変に気取らず、心の底から狂ったように楽しめるチームが今年の目標です。そして、それによって生み出される萎縮しない雰囲気作りを大切にしたいと思います。塩島組パッション班は、キラキラのメラメラでバーニングします!!』
 
かな(サポート班)
『新チームになり、今までよりもやるべきことが増えると共に、最上級生としての責任も感じています。一方で、忙しいと思える毎日が幸せで、とても充実しています!マネージャー4人でアイデアを出し合って、どうしたらラグビー部の環境がもっと良くなるかを考え、塩島組をしっかり支えていきます。これからもよろしくお願いします!』

わか(サポート班)
『塩島組の強みとして『仲の良さ』があげられました。私達マネージャーも仲の良さが強みだと思っています。マネージャー内で自由に意見を出せるこの雰囲気を大切に、プレイヤーと共にマネージャーも成長していきたいです。マネージャー同士はもちろん、プレイヤーとも『一体感』を持って全力でサポートしていきます!よろしくお願いします!!』


 選手にとっても、私にとっても努力と忍耐の年になる。『Independence』は『放任』とは対極に位置する。観察、分析、試行錯誤。選手と指導者双方にとって、求められる労力は『命令・管理』の数倍は必要だ。
 塩島組、『Independence』というスポーツの持つ最大の楽しみと苦しみを、とくと味わってもらいたい。
 その先には、きっと未知の進化と感動がある。



 

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