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vs日大戦 『忘れてはいないか』

2016/01/18

 万事を尽くしどれだけ準備しても、勝利につながらないこともある。ただし万全の準備がなければ、勝利の可能性すら消えてなくなる。新人戦3回戦・日大高校戦。準備という面では、過去6年(私の赴任以来)で最悪の状態で臨む公式戦となった。

 1月5日、練習初めからチームは訳あって3回戦準備に全く集中できないチーム状況に陥った。崩壊寸前。そんな状態で臨むことになった法政二高との練習試合だから、木っ端みじんでどん底まで落ちるくらいなら良かったのだが、けが人も続出してしまった。


 法政にとっては、かつて見たことのないない横高ラグビー部の姿だったのだろう。見るに見かねた法政二高のコーチ・梶原宏之さん(日本を代表する名フランカー、第2回第3回
W杯にJAPANの大黒柱として出場)からも、プレーへのアドバイスではなく「ラグビーを続けることの意味」「自分のために頑張りぬけ」の温かいメッセージをいただいた。そんなどん底にいた。

「あれが悪い。これができてない」の反省会を続けるチームメイトたちから離れ、コウヘイだけが分析よりも今は感情に従った。ただ一人、嗚咽を漏らし涙を垂れ流しながらグランド脇を走り込んだ。その姿を見て、年始からの悲惨なチーム状況で忘れていた大切なものを思い出すことができた。暗闇から這い上がるための、僅か1ミリ程度の光だった。

 翌日から僅かずつではあるが、チームの状況は最悪よりは良くなってきた。しかし法政戦で多数出てしまったけが人の影響で日大戦の準備は全くできず、さらにはゲーム2日前の金曜になって攻守の絶対的な柱となっているコウヘイとNO8コウイチロウの欠場が突如決まった。ポジションは大きく変更となり、BKのリザーブがFWのスタメンとなるようなメンバーで日大戦に臨むことになった。


 ゲームは覚悟していたとおり、厳しいものだった。例えばスクラム。
BK選手たちがぶっつけ本番で臨んだ即席FLNO8(6番に関しては60分間をSHWTBなど4人で分割)。足元からボールは再三こぼれてアタックの起点も失った。フィットネスが切れた後半、フィジカルの差がゲームの流れに拍車をかけた。その日の気持ちだけでごまかせるほどラグビーは甘くない。記録的大敗で新人戦は終わった。


 

タイガ

『今回のゲームは、自分たちの弱さを象徴したゲームになりました。前半終了時点では、まだまだイケると思っていたはずが、ふたを開けたら60点差という結果。後半の入りがふわっとしたこと以上に大量点差によって集中力を欠きミスを修正できず目の前の相手にぶち抜かれる、ありがちなワンサイドゲームとなってしまいました。自分自身もこのゲームのために万全な準備をすることが出来ませんでした。

 この現状を重く受け止め関東予選までの2ヶ月、チーム全体で本気のメンタルと体づくりに向き合っていきたいと思います。』


コウダイ

2016年初めの公式戦で日大高校との試合でした。今までの甘さ、弱さをとことん知らしめられたと思います。個人としてチームとして初心を絶対に忘れず、Independence、自立、自律、そしてチャレンジしていきたいと思います。』

 


 一人ひとり、よく頑張っている。それは頑張っているつもりではないのか?それは頑張っているフリになっていないか?横高には推薦選手も人工芝もありはしない。合宿も遠征もほとんどなければ、練習のスペースも時間も僅か。(最高の
OB会はあれど)環境面では私立に大きく劣っている。

 ではどこに私立と戦える可能性を見出すのか。それは、一人ひとりの内面で勝負するしかないのだ。覚悟が決まっているかどうか、内発的なモチベーション次第で一回の練習でもウェイトでも成果は何倍にも変わってくる。最も必要な体作りも増量も、覚悟がなければいつまでたっても「食べているけど増えません」と変化など現れやしない。


 1年の春、自分で決意して踏み込んだラグビー道。引退まで辞めない覚悟はあるのか、口先ばかりで逃げない強い男になる覚悟はあるのか、私立の対面を圧倒する選手になる覚悟はあるのか、己をかけて最後の最後に感動と感激をつかみ取る覚悟はあるのか。

 60周年式典でも話をさせてもらったが、横高ラグビーの伝統と歴史は関東大会うんちゃらの戦績など、どうでもいいことだ。辛くとも仲間とともに耐え、最後まで諦めず、「やってやるぜ」の熱い反逆精神を胸に楕円球を追いかけること。これが60年もの長い間、先輩方が繋いでくれた伝統だ。

 練習メニューも運営も選手主導と自主性の割合が相当大きくなった今シーズン。班活動やノートや各種シートは合理的に改良・システム化された。チームトークやミーティングでの発言の数は、確かに5年前の10倍にもなっただろう。しかし、いつの間にか「分析家」になっていないか。「こんちくしょう」も「ふざけんなよ」も「いいからやろうぜ」も消えてはいないか。

 
 熊坂組の長島徹治は、ウェイトなんて管理強制されずとも空いた時間があれば
200kg近いおもりを一人きりで担ぎ続けた。稲垣組の大塚翔太は、自分がレギュラーを取るために必要なのは体重だと覚悟を決めて食べ、体重と同時に自信と信頼を勝ち取った。岩田組の丸山詢平は全体クールダウンの後でも「キッチー!」と叫びながら習慣のようにタイヤをひき続けた。
 伊藤組の栗山優真は、昼休みはきまってウェイトルームのカギを借りに来た。津田組の櫻井風太は、自分にはフィットネスが必要だと考えたなら、葉山から山道を走って練習にきて、練習後は一人でウェイトやエアロバイクで追い込み、走って帰った帰宅後はプールでさらに己を鍛え抜いた。宇野組の宇野明彦は、誰より分析力も批判力もあるのに、惨敗の後は誰より感情的に自分を苛め抜いた。

 自主性による運営やポジティブな雰囲気づくりに意識が集中するうちに、見せてもらってきた先輩たちの背中を忘れてはいないか。科学を追求しつつも最後は非科学。理を追及しつつも最後は熱。われわれがやっているのは、そんなラグビーなのだ。

 
 

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