神奈川県立横須賀高校ラグビー部
法政二高戦 『プロセスの敗北』
2016/04/25
凄まじいタックルの嵐。溢れる闘志。想定通り、横高より「3周りは大きく分厚い」法政二高に対し、観客の心を揺さぶるほどのタックルで応戦した。1月の練習試合では「100対0」級の結果となり、練習台にもなれずに木っ端みじんにされた相手。今年の法政の実力は新人戦でも証明され、準優勝した東海大相模と堂々の互角だった(14-17)。横高との力差は大きく、客観的予想ではいいとこ「5-60」くらいだっただろう。
正直、塩島組がターゲットとしていたレベルよりも明らかに高い相手だった。それでも「横高の歴史に負けを前提とする試合などない」と、ミリ単位の勝機を狙って挑みかかった。
準備してきたアタック、気迫と意地のDF。シーソーゲームは後半までもつれ込み、残り10分まで逆転可能スコアだった。敵陣ゴール前の「あのミスがなければ・・・」のタラレバが思いつくほどの接戦となった。残念ながら「足が止まった終盤」に突き放され、「12-27」でノーサイドの笛が鳴った。
試合後、闘志あふれたDFは全国区のチームの指導者からも評価され、「すごい刺さりまくってましたね。あんなタックルうちの選手にはできない」と、ありがたい言葉までいただくことができた。多くのチームから「やっぱり横高は違いますね」と声を掛けられた。
この日は本当によく頑張った。ただし「この日は」だ。
勝負の世界、努力をした者が結果を残せるとは限らない。プロセスが完璧なら、勝利は約束されるか。残念ながらそれは幻想だ。分かってはいるけども、それでもやっぱり「勝つに値する努力の日々を送ってきたから、必ず勝てる」の信を持ち、ゲームに臨みたい。
エディージャパンが南アフリカを倒した。その選手たちも関係者も、口々に「あの80分間が素晴らしかったんじゃない。エディージャパンは勝つに値する準備(ハードワーク)を3年間ずっと続けてきた。準備・プロセスの勝利だ」と胸を張って答えている。「勝敗」や「夢の実現」という結果はコントロールできない。我々ができることは「準備」「プロセス」、つまり努力の日々だけなのだ。
法政は花園を目指し、推薦で入った選手や附属中学から一貫で鍛えられている選手たちがラグビーに懸けた日々を送っている。その志と覚悟、日々の努力は、身体つきを見れば一目瞭然だ。そんな何十人もの中から、競争を勝ち抜いた15人がグランドに立っているのだ。
それに対し、我々は「この日」に至るまでどうだったのか。先月は?3カ月前は?半年前は?ほとんど素人がたった20人のチーム。競争などなくともファーストジャージを手にできる。ファーストを手にした全員が、法政の選手たちのような覚悟をもって努力の日々を送ってきたのか。残念ながら、経験者の数やレベルなど「素材」という問題ではなく、「ラグビーに懸けてきたのか」というプロセスで負けていたと思っている。見ればわかる。こんなにも身体つきが違うのだから。
「3周り大きく分厚い」相手に、横高は細くて軽い身体なのに魂を込めてタックルで刺さり続けた。それは誉めたくもなるが「3周りも細くて軽い」身体でこの日に至ったから、この構図になったのだ。
「足が止まった終盤」に突き放された。当たり前だ。50分間、100も200もあるコンタクトプレーのたびに、法政の3倍のエネルギーを使わなければ止められないのだから。
Independenceをチームテーマに掲げ、ほとんどのことを自分たちで決定して取り組むチームになった。私が管理して厳しいメニューを科すことは、過去の代の数分の一もない。自主自立に委ねられた結果、選手間で努力の量や質に大きな差が現れていた。全体トレーニング後に時間がたっぷりあるのに毎度さっさと着替えて帰ろうとも、何度計測しても体重に変化がでるわけのない食生活をしていようとも、競争のないチームだから全員がファーストジャージを手にしていた。
「甘やかされた兵隊はなぁ 全滅するんだよ!」大学入学直後、ラグビー部のトライアル期間(新人練と呼ばれる地獄の仮入部期間)に、誰だか覚えていないが鬼のように見えた先輩が言っていたのを思いだす。今はその理がよく分かる。
それでも今年は、選手自ら掲げたIndependenceを貫いてもらう。これから二度や三度、チーム内で意識の差による衝突が起きようとも、最終的には大人による管理命令を超える力がチームに宿ると信じている。やるのは誰だ?生きるのは誰だ?変えられるのは誰だ?
塩島組、残された大会は、あと一つだけ。
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