神奈川県立横須賀高校ラグビー部
創部60周年イングランド遠征 『夢と感謝』
2017/03/31
夢の話だと思っていた。横須賀高校ラグビー部イングランド遠征。いち県立高校のラグビー部が語学研修などではなく、ラグビーの遠征としてイギリスまで行くなんて、まず実現できる訳がないと。
きっかけは、マイク・ガルブレイスさん。昨夏のマルボロカレッジとの交流で横須賀高校にほれ込んだ。日本の高校を彼の母国に遠征させるという長い夢を、この横須賀高校で実現したいと本気になってくれた。
羽田空港。ツアーの成功を期して。
マイクさんから話がきたときには、「そんなの県立高校では絶対無理ですよ」という回答しかできるわけもなかったが、マルボロカレッジの監督バッジ(アンソニー・パントニー)も昨夏、「こんどはイギリスで最高のおもてなしをしたい。ぜひ来てほしい」と言っていたことを思い出した。
「There is a will , there is a way」意志のあるところに道は開ける。
マイクさんは日本の公立高校の事情など知るわけもないので、強引に私の背中を押し続けた。
マルボロカレッジ。このツアーを実現させてくれたバッジと。
「可能性は1%くらいしかないけど、実現しようと動いてみなければ0%。万万が一実現することになれば、生徒たちにとっても、私の教員生活にとっても二度とない幸せな夢物語実現する」
全く期待することなく、とりあえずあの手この手、四方八方に実現に向けた働きかけをしてみた。周りの反応は、予想に反して非常に温かいものだった。
学校や教育委員会との交渉や紆余曲折を経て、この遠征はOB会主催の60周年記念遠征と位置づけられ、OB会のサポートと保護者の皆様の同意により、まさかの実現をすることになった。
最終戦・ウォリックスクール戦前のハカ
マイクさんやマルボロカレッジのバッジ、トゥイッケナム博物館のフィル、ウォリックスクールのジェームス、ラグビー校のガイさん、HISの島津さん、現地OBの池上真介(リコーヨーロッパ支店駐在)などと200回を軽く超える綿密な連絡を取りながら、6ヶ月かけてツアーの計画を作成した。
寝食を共にしたマルボロカレッジ。最大の接待をいただきました。
マイクさんのホームステイ英会話教室、OB会による壮行会などを経て、いよいよ夢物語が実現する2日前、衝撃の情報が飛び込んできた。ロンドンでイスラム過激派による複数の死者を伴うテロが起きてしまった。まさに4日後に行く予定だった場所での事件だった。
これが学校主催の語学研修などであれば、遠征中止になったのかもれない。警備が頑強になったロンドンは、事件前よりもむしろ安全という意見も多かった。しかし送り出すご家族の気持を考えると、テロの起きたばかりのロンドン中心街の観光を強行するわけにはいかない。
オックスフォードを半日見学。
そんなまさかの事態に対して、26日のロンドン観光を綿密に予定してくれていた池上真介さんと堀江先生(昨年まで追浜高校ラグビー部監督・現在ロンドンの大学院に留学中)の二人が、夜を徹して郊外に出る急増プランを立て、予約など全ての段取りを整えてくれた。二人の途方もない努力と調整により、夢のツアーは潰れずに済んだといっても過言ではない。
左から櫻井(同行通訳)、後藤(同行コーチ)、濱窄(現地OB)、富田(同行トレーナー)、私、池上(現地OB)、堀江先生(現地留学中)
6ヶ月間の準備を経て、ついにやってきた当日。終業式を経て一度帰宅し、夜の10時に羽田空港に再集合した。見送りにきてくださったOB会顧問会会長の加藤達男さん夫婦から安全祈願のお守りをいただき、いよいよ搭乗。横須賀高校イングランド遠征が、ついに実現した。
ドバイの雷雨の影響で、羽田離陸は1時間遅れ。ドバイ着はさらに1時間遅れた。ドバイからのフライトも2時間遅れになってくれたおかげで、予定通りの便に搭乗。羽田~ドバイの12時間、ドバイ~ロンドンの8時間、合計20時間のフライトを経て、2時間遅れでロンドンヒースロー空港に無事に到着した。
何しろテロの直後だ。ただでさえ審査が厳しく時間がかかると言われているヒースローでの入国審査。しかもドバイというイスラム圏からのフライトだ。入国に2時間はかかってしまうかもしれないと予想していた。
しかし、JALロンドン支店にお勤めの小林さんの協力(OB会加藤肇さんのコネクションから依頼)もあり、幸運にも他の旅行者の行列をすり抜けるように、別コースでスルッと最短時間で入国させてもらうことができた。
とはいえ、2時間遅れの着陸だったので、この日に急げば間に合うと予定していたトゥイッケナムスタジアム(世界ラグビーの聖地)のツアーは残念ながらキャンセル。一応トゥイッケナムを外からだけでも拝見。その後、イビスアールズコートホテルにチェックインした。
世界ラグビーの聖地・トゥイッケナム
ここからは現地で活躍中の池上真介さんと堀江先生が2日間、まるで旅行会社のガイドかのように完ぺきにサポートしてくれた。
ホテルから徒歩10分の場所でイギリス最初の食事。イギリス食文化の基本中の基本、パブ(日本ではバー)の1室を借り切ってフィッシュ&チップスを堪能した(店のチョイスも学校正規旅行ではありえない最高のチョイス)。
ホテルに戻って、おそらく全員が爆睡。刺激溢れる初日を終えた。
パブだけど、もちろんジュース。
フィッシュ&チップス!
15分後・・・。初海外で20時間移動だから当然ですね。
2日目、当初の予定はバッキンガム宮殿やビッグベン、ウェストミンスター寺院、大英博物館など旅行ガイドに出てくる王道の観光をする予定だったが、まさにその場所でテロがあったので、大きく予定を変更。急きょ池上さんが手配したバス(ベンツの大型、なのに日本ではありえないほど安い!)で、午前中は最終日に1時間だけ寄る予定だったオックスフォードへ向かった。
約40個のカレッジが存在し、その総称としてオックスフォードユニバーシティーと呼ばれている。ケンブリッジとの対抗戦などでも知られる世界屈指の名門大学。カレッジごとにそれぞれ誇りを感じているエンブレムと教会を持っている。美しく統一されたゴシック調の建物は、キリスト教のカトリックの象徴だ。すべての建築物に何かしらの像がついており、これでもかとキリスト教が彼らの軸になっていることがうかがえる。
イギリスでは珍しいほどの晴天が建物の美しさを際立たせる。大学と教会と寄宿舎とショップなどすべてが融合された美しい街だった。見学後に1時間半のフリータイム。各自で昼食を食べたり、土産を購入したり満喫。世界一素敵なオープンキャンパス体験となった。
続いてバスで向かったのは、アリアンツスタジアム。ヨーロッパのラグビー最高峰・プレミアシップの観戦。現在3位のサラセンズ(ホーム)対5位のバース(アウェイ)。4位以内のプレーオフ争いにとって双方負けられない一戦だった。
ゲームは組織化されたシェイプアタックで攻め立てるサラセンズが圧勝。あまりに大きすぎる30の肉体が集まるピッチには、抜けるスペースなどほとんど存在しないようだった。
この観戦の目的は、イングランドのラグビー文化(空間)を体感すること。観客が自由なスタイルで空間を楽しみ、主催者も楽しませる工夫がふんだんになされている。日本の真面目な空気の観客席とは全く異なる開放的なラグビーの雰囲気を味わった。
ノーサイドの後は、お客さんにグランド解放という驚きの文化の違い!老若男女、所狭しと芝生の上でラグビーをエンジョイしていた。
長いフライトなどでラグビー熱が充電されていたのか、横高の生徒たちもペットボトルを使って動物のじゃれあいのようなラグビーが始まった。ついには傍のショップで買ってきたおもちゃのようなラグビーボールで、本格的にタッチフット。もちろん、その瞬間にそこにいたイギリス人のおじさんたちも仲間に入って。
バスでホテルに戻り、その日の夕食は堀江先生が注文してくれたテイクアウェイの弁当。バーガーとキヌア(イギリス特有の野菜)をいただいて、急増プランを満喫した2日目が終了した。バス会社の予約や食事の手配、プランニングからアテンドまでとてつもない労力を惜しみなく引き受けてくださった池上さん、堀江先生、本当にありがとうございました!!二人の力なくしてこの遠征は成り立ちませんでした。
3日目、いよいよ遠征のメイン行程。バスに乗車し、マルボロカレッジへ向かった。途中の昼食休憩などを含んで3時間、カレッジに到着した。久々に再会したマルボロの監督・バッジ(W杯でも活躍したスコットランドの英雄)に誘導してもらいながら、学校見学。神々しい校舎や教会、すれ違うマルボロの学生たちの洗練された紳士淑女の雰囲気に圧倒された。
昼食は学校の巨大カフェテリアでのビュッフェスタイル。「1食いったいいくらするんだろう?」と思ってしまうほど、ハイレベルな料理がふんだんに並んでいた。
バッジの提案で30分ほどマルボロの町を歩き、いよいよ試合の時間。外国ではほとんどウォームアップに時間をかけないのが当たり前なので、今回の遠征はあえてそのスタイルで。普段は50分かけるアップを20分程度で終わらせて臨んだ。旅の疲れがあるので、なるべく疲れないように。
ゲームはというと圧倒的に相手の方が強かった。「横須賀の主力たちは卒業し、この遠征は昨夏のU16メンバーばかり。だからそれに合う強さのチームで」とお願いしていたのに、メンバーは昨夏のU18・Aばかり。「YOKOSUKAをなめてはいけない」「英国人として負ける姿を同級生たちに見せるわけにはいかない」という気持ちが存分に伝わってきた。
タックル、タックル、またタックルを繰り返すも、この時期には考えられないほど高い気温の影響もあり、次第に並べなくなった。深い懐からのオフロードパスで崩され、最終スコアは「0-52」。2本のトライチャンスなどもあったが、完敗に終わった。
しかし、この遠征の目的はラグビー強化ではない。人間としての価値観や視野を広げること。ラグビーの深い喜びを知ることだ。相手からも「オーガナイズされたDFとタックルは見事だった」と言ってもらえたように、持てる力はしっかりと出ての実力通りの結果。アフターファンクションに向けて気持ちを切り替えた。「アフターファンクションで今度はこっちが圧倒するぞ」くらいの切り替えで。
アフターファンクション会場の扉を開けると、誰もがしばらく目と口を大きく開けてしまうほどの美しい空間だった。まるで高級な結婚式披露宴会場。出てくる料理も、披露宴のような高級感溢れるコース料理。半年前に横高の学食で出した蕎麦と天ぷら、YC&ACで出したカレーライスが何だか申し訳なく思えてしまった(値段がきっと10倍以上・・・)。
ファンクションでは昨夏同様4つのグループが次々にエネルギーを爆発。「YOKOSUKAってホント面白いやつらだな」の評価を得るとともに、フレンドシップを深めた。
その後はマルボロの生徒たちの誘導のもと、それぞれの学校寄宿舎へ。2人だけの寄宿舎もあれば、14人が貸切コテージに泊まるなど、様々な形式で泊めていただいた。
ソーラン節
ドラマ仕立ての空手ショー
ももクロ?でぶクロ?
私とタケルで剣道
バタバタの楽屋裏?
試合で軽い脳震盪を起こしてしまった一人の選手は、試合後すぐに学校のメディカルセンターでチェック。2時間ほど休んだ後は、念のためタクシーで近くの病院に行き、「大丈夫。でも明日はできるだけ安静に」という医者の判断と指示をもらった。
なんでもイギリスの制度として医療費は無料の診察・病院もあるようで、費用はタクシー代しかかからなかった。ただし、大混雑で診察まで4時間待ち。診察を受けたのは深夜の11時を過ぎた頃だった。アフターファンクションに出ずにずっと付き添ってくれた富田さん(トレーナー)と風太(通訳)に感謝。3人は0時過ぎにカレッジに戻り、寄宿舎ではなくメディカルセンターに泊めてもらった。
3人は大変な経験となったが、3日目も予定通り終了。試合に完敗を喫したショックがすぐに消えるほど、夢のような刺激が次から次に訪れた一日だった。
校長、副校長とも、わざわざご挨拶にきてくれました。
生徒は学校寄宿舎に、私はバッジの家にホームステイ。
4日目、この日もハードでタイトなスケジュール。寄宿舎ごとに教会に朝の拝礼にいったり、朝食をビュッフェでいただいた後は、楽しみにしていたCCF。CCFとはイギリスの学生たちが行う軍事訓練のこと。バッジ曰く「これを知らずして英国教育は語れない」とのこと。案内されるがままに、CCFの会場らしきところに向かった。
待ち構えていた鬼軍曹風なCCF教官が一言。
「おはよう皆さん!さぁすぐ着替えて!」
「えっ!見るだけじゃないの?」
なんと、CCFを見るのではなく、自分たちだけが体験させてもらうものだった。
優しさと(おそらく鬼のような)恐ろしさも併せ持つ教官の言葉。
「体力と知力がないと国は守れない。英国人たるもの両方必要だ。ただしそれだけでは、全く足りない。一番大切なのは、団結心、思いやり、チームワーク。それらを持って仲間と共に困難に立ち向かうこと。それを体に叩き込むのが、CCFだ」
なんて素晴らしい経験だろう。今日はエクササイズ程度の体験だったが、これを厳しく継続して行えば、きっと人格が磨かれることは間違いない。
もちろん、私たちスタッフも女子マネも参加です。
(パスポート紛失騒動ののちに)昼食。毎度のごとく、昼食とは思えないほどの豪華なビュッフェをいただき、バッジの見送りのもとでマルボロを出た。誇り高き英国紳士。昨夏の日本での我々のおもてなしを、10倍返しでいただいた気分だ。
午後はウォリックスクールに移動してゲーム。順調にバスは進み、さぁいざ出陣。とはいかなかった。バスの運転手・ナジが場所を間違って、翌日に来る予定だったラグビー校に来てしまったのだ。基本無愛想で、常に不満そうに少し怒っているナジ。風太が懸命にいろいろ伝えているが、扱いやすくはないタイプの人間だ。ウォリックスクールの駐車場で待ち構えていたマイクさんの電話協力もあり、スーツケースを再度バスに詰め込み、急いでウォリックに向かった。
車窓からはいつでも羊や馬のいる景色。
今度こそウォリックスクールに1時間遅れで到着。何しろ遅刻をして相手を待たせた身分だ。アップ時間は今回も20分。「イギリスは晴れない。基本、曇りと雨」と学習してきたのに、ここまでずっと晴天続きだった。やっとイギリス本来の天候を味わうことができた。強い雨風と曇を10分おきに繰り返す中、キックオフを迎えた。
ラグビー専用の美しい芝グランドが12面!前回ワールドカップの時にJAPANが練習をした会場。今回はAチーム専用のナンバーワングランドを使って試合。
こちらはマルボロとは異なり、リクエスト通りのマッチアップ。学校内に15程度のチームを持つウォリックスクールの中で、弱めのU16のCチーム。攻守ともに横高が圧倒することができた。雨風でエラーを連発したが、最終スコアは「44-0」。
何しろ力の関係が分からない中でのマッチング。ウォリックU16のヘッドコーチ・ジェースムとマイクさんは、「ヘイ!ゴロー!話が違うよ。YOKOSUKA、全然強いじゃないか!うそつき!」「くそー!こんなことならU16のA出せばよかったよ!」と7割笑って3割悔しそうな顔。まぁ前日にボコられたことや、このツアーの2試合の目的は「大きなけがをしないこと」なので、そこは許して。
そしてその後はアフターファンクション。ポテトとビーンズを使った絶妙な料理をいただいたあとは、昨日同様横須賀のアフターファンクションへの異常な準備とこだわりを披露。もちろん、大満足してもらった。
その後は、それぞれのホストファミリーの迎えでホームステイ。横高1~3人でそれぞれの家へ。僅かばかりしかしゃべれない英語でも、素敵なフレンドシップと思い出を作ることができただろう。「How big !」ばかり連発してれば何とかなったという声も翌朝聞こえたけど・・・。
ヒデヨシのけん玉スキルは本当にすごかった!
マンオブザマッチは・・・
迫力満点、伝統のウォリックコール!
いよいよ5日目、最終日。この日も予定びっしりの弾丸コース。まずは9時にウォリックスクールに再集合してホストとお別れ。その後はウォリックの町を1時間だけ散歩で見学。有名なウォリック場やセントメアリー教会などを早足で見て、大英帝国を目に焼き付けた。
美しいウォリック城とエイボン川
セントメアリー教会
螺旋階段を上りに上って。
バス移動し、ラグビー校へ。ついに、ついにラグビー発祥の地に足を踏み入れることができた。
1823年、イングランドのラグビー市にあるラグビー校での出来事。サッカーの試合中にウィリアム・ウェブ・エリスという少年が、フットボール(サッカー)のルールを無視してボールを手に持ち、走り出してしまったことがラグビーの起源だと言われている。実際のところは、エリス伝説は全く事実ではないという説の方が主流だ。
マイクさんの知人・ガイさんの協力で実現。学校教会で歴史説明。
中世から続く野蛮な祭祀的行事だった民族フットボールを、ラグビー校のアーノルド校長が授業に取り入れたことが起源。「団結心・知性・勇気・判断力など、英国紳士を育てるために、フットボールこそ最適な教育手段だ」とアーノルドは考えた。
ラグビー校で横高ハカ!
その後、パブリックスクールごとにルールが異なっていることで混乱が生じたため、ルールを統一し、足だけを使うものがAssociation Football(若者が略して呼ぶとSoccerサッカー)、ボールを手で扱うこともありで、相手の脛を蹴飛ばす(ハッキング)も認められているのがラグビー校などで行われていたRugby Footballとされた。エリス伝説は時代的にも矛盾があるが、なんだか悪くないエピソードにも思えるので、そのまま使い続けられている。
ちなみに、民族フットボールを説明すると、参加選手はいつも適当で、ときには何百人対何百人。フィールドは集落や町全部など。試合時間は長い時は1週間くらいもざら。車でボールを運ぶことや人を殺すこと、教会に立ち入ること以外は何でも許されていた。死者が続出したため、時の政府から何十回もの「フットボール禁止条例」が出されたが、民衆はフットボールを愛し、弾圧を受けながらも止めることはなかったと言われている。
いずれにせよ、ラグビーフットボールはこのラグビー校で生まれたとされることは間違いない。「the Close」ラグビー発祥のグランドの名称である。その「the Close」でプレーできるなんて、世界中のラグビー人間にとって、夢のまた夢だ。そんな夢物語が実現したのは、たまたまラグビー市に住み、ラグビー校の重役と友人関係にあるマイクさんのおかげだ。
ここはさすがに私もプレーせずにはいられません!
ラグビー校の重役・ガイさんから教会の中でアーノルド校長やエリス少年の話などを伺い、ついに「the Close」でのラグビーを楽しんだ。ここでやるべきことは、もう練習ではない。ラグビーを楽しむこと。タッチフットの後にランパス3本、最後はダイビングトライで締めた。その後、オリジナルハカ「坂東武者」を踊り、グランド中央で坂東武者を大斉唱。生涯決して忘れることのない、夢の時間を過ごすことができた。
この3人抜きでは決してこの弾丸夢ツアーは実現できませんでした。
後ろにはエリス少年碑!
いよいよヒースロー空港へ。しかし、当初予定していたオックスフォードは二日目に行ったので、その時間を初日に間に合わなかったトゥイッケナムに変更。マイクの友人でトゥイッケナム博物館の館長フィルさん(昨夏はYC&ACのアフターファンクションにも登場)のサポートも得て、今度こそ世界ラグビーの聖地・トゥイッケナムの中に入ることができた。
この日行われていたのは、イングランドの学校間ユース大会。全チームが出ているわけではないので、正式な全国大会とは呼べないようだが、それでも300チームの中で勝ち抜いた2校によるファイナル。実はそのチームがウォリックU18Aだ。
何しろ昨日戦い、アフターファンクションやホームステイでフレンドシップを築き上げた相手だ。ウォリックは900人の全校生徒で応援に来ていたが、我々もその横に座り、ウォリックの生徒たちが「あのアジア人は何だ?」とざわつくほどの声で昨日のアフターファンクションで見せてもらった「ウォリックコール」を連発した。滞在時間は買い物の30分とウォリックの応援を足しても1時間程度。余裕をもってヒースローに向かった。
トゥイッケナムで、昨日のファンクションで覚えた「ウォリックコール」
予定時間通りヒースロー着。何しろこの遠征は弾丸ツアーであり、中身があれもこれも欲張りに詰まっていた。しかも予定変更に次ぐ変更。バスの運転手・ナジはただでさえ常にイラついていたのに、痛恨の到着地間違えまで自分で犯してしまった。そんなナジに横須賀焼き(お菓子)を渡し、感謝を伝えた。あれほどずっと不機嫌そうな顔だったナジの顔が、一気にほころび、握手で別れた。こんなところも、旅の楽しみの一つだ。
遠征を発案し、各方面に働きかけ、半年間も多大なるサポートをしてくれたマイクさんとはここでお別れ。4日目はスタッフ4人、マイクさんの自宅に泊まりました。何もかも本当にお世話になりました。
夢の中を駆け抜けた5日間、しかしここはテロからまだ1週間しか経っていないロンドンの空港だ。もう一度気持ちを引き締めてチェックイン。約1時間遅れでドバイに向けて離陸した。ドバイではもともと1時間半で乗り継ぎをしなければいけなかったのに、1時間以上遅れての到着。保安検査場を通過したのは、搭乗締め切りのなんと6分前。小走りで何とか無事に羽田に向かうフライトに間に合った。
23時半、おおむね予定通り羽田到着。最高のスタッフ、素晴らしい生徒たち、温かい保護者の皆様とOB会の皆様、心から素敵な英国紳士たち、本当にたくさんの方々にサポートしていただいたおかげで、生涯決して忘れることのない夢物語が実現した。
夢が実現したとき、そこにあるのは達成感や充実感ではなく、支えてくださったたくさんの方々への、深い感謝の念だけだった。
0時半、5分間の最後のミーティングを羽田で行い、解散。横須賀高校ラグビー部創部60周年記念イングランド遠征は、たくさんの方々の厚い熱いサポートのおかげで、見事に成功し、幕を閉じた。
羽田空港に到着し、保護者の皆様に生徒たちをお返ししたところで、私の7年間の横須賀高校ラグビー部での任務が全て終わりました。31日の1日だけ休んだら、4月1日から平塚工科高校に異動となります。横須賀高校ラグビー部監督としての最後の練習が、母国イングランドのラグビー校。そのグランドの真ん中で胴上げをされての終幕。これほど幸せなことはありません。世界一幸せな監督です。
次回、このホームページの最終記事として、7年間の御礼と別れの挨拶をさせていただきます。
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