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横須賀セブンス3年ぶりの2冠達成 『ラグビーの空気』

2013/06/23

 横須賀セブンス。昨年はリョウイチの独走劇的トライで優勝を飾るも、2年生チーム(現3年生)が無残な敗北を喫し、試合後のシボリがあった。思い返せば一昨年(稲垣組)も決勝で横須賀総合に敗れ、やはりシボリがあった。難敵は今や横須賀高校よりも多い経験者を揃える横須賀総合高校だ。

 今年は上級生トーナメントにA(3年生)とB(2年生)、1年生チームに1年Aと1年Bの、合計4チームが参戦した(それ以外に、合同チームに6人レンタル)。キャプテン・トモマサが3ヶ月ぶりに復帰したものの、エース・ケントが膝のケガをおしての強行出場という不安要素を抱えるA。昨年同様、前日夜に修学旅行から帰ってきたB。盤石のメンバーを並べたはずの1年A。前5人中心で挑戦する1年B。数年前の東日本学生セブンスで早稲田が新潟大に敗れたように、何があるか分からないのがセブンスの恐怖。
 
 開幕ゲームは横須賀1年B対追浜高校1年。ゲームキャプテンのWTB択海のランは決定力十分。だが前5人ばかりのメンバーでは、セブンは相当厳しいはず。「どことやっても大敗で仕方ないかも」の予想だったが、それは見事に裏切られた。コタロウ中心に、ひたすら繰り返すタックルは見事。毎度3~4人は蹴散らすヤマトの強烈なランで生んだチャンスをきっちり仕留め、「25-0」で勝利した。

 続く1年Aは横須賀総合1年相手に、こちらはむしろ予想外の接戦。闘争心余ってか、セブンスらしくない近場のヒット中心のプレーに固執し、最後は横須賀総合の気迫に押されて失トライ。「20-5」の勝利となった。

 3試合目は横須賀A(3年生)が登場。横須賀総合Bとの対戦となったが、「渡せばトライ」の信頼に応えるケント以外にも、リョウゴやタイヨウらが縦横無尽に走り回り、「48-0」の大勝。
 

 4試合目は横須賀B(2年生)対合同(津久井浜2名、三浦臨海1名、横須賀6名)。さすがにワンサイドで横須賀Bが勝ったが(51-0)、なぜだかやたら雰囲気が悪い。暗い。原因はよく分からないが、とてもラグビーをやる雰囲気ではなかった。


 上級生の部の準決勝第1試合は横須賀A対追浜。初戦よりは詰めが甘く課題が残る試合となったが、危なげなく「20-0」で勝利。順当に決勝進出を果たした。
 


 準決勝第2試合は横須賀B対横須賀総合A。気持ちはおそらくあれど走れない。不用意なペナルティーを繰り返して自滅。そつなくスコアする総合のラグビーに完璧に屈し、「5-43」で敗れた。
 その後Bはコンソレーション(敗者戦)で追浜と対戦。1年生ながら上級生トーナメントも兼務で出場していたアキヒコとタツヤの2名は、1年生の部決勝が次の試合なのでこの試合は外し、まさに2年生だけの構成での試合。この展開に燃えるかと思いきや、相変わらず雰囲気が最悪。後半は勝手に勘違いして?自分たちで勝手にメンバーチェンジして主力2名を下げ、劣勢に拍車をかけた。「0-36」の無残な敗北。昨年は1年生トーナメントで横須賀総合に大敗し、追浜と引き分けた代。今年は横須賀総合だけでなく、2年生ばかりの追浜にも大敗し、三浦半島最弱の代であることが確定した。
 走れない、スキルがない、そんなことは練習でどうにでもなる。そんなことより、なぜここまで暗くネガティブな雰囲気でラグビーをやるのか。勝っても負けても試合中からとにかく暗い。雰囲気を作れないのも、この代の実力だろう。


 さて、1年生トーナメント決勝。横須賀A対横須賀B。初戦が良かったBと良くはなかったA。とはいえ、さすがにセブンス向きの選手を集めたAが終始圧倒。「44-0」で優勝を決めた。
 しかしこちらもなぜか空気がおかしい。手も足も出ないBが暗くなるのは分かるが、Aがひどく悪い雰囲気でプレーを続ける。悪い意味でのピリピリ感、いやイライラ感。言い換えると険悪。レフリーをやりながら、このひどい雰囲気の決勝戦を1分でも早く終わらせたいと思った。こんな試合は初めてだ…。圧勝優勝なのに…。


 いよいよ2013年度横須賀セブンス決勝戦。相手は因縁の難敵・横須賀総合A。何が起こるか分からないというセブンス特有の緊張感に包まれた。
 開始直後に横須賀総合が先制トライ。まだ時間は十分あるが、勢いで持っていかれることも多いのがセブンス。焦らず落ち着いて逆転ができるか。今までの横高なら苦手なタイプの心の強さが求められたが、見事に勝利への流れを手繰り寄せた。
 アサトのキックオフキャッチで流れをつかむと、タイヨウやトモマサが中央をかき回し、ケントがフィニッシュ。一人ひとりの自由な発想とプレーでトライを重ね、DFでは豊富なコミュニケーションで規律を保ち続けた。
 最終スコアは「33-5」の快勝。昨年のこの日この時間、シボリでランと生タックルを繰り返していたメンバーが、完璧に近い試合で優勝カップを手にした。



なつみ
『大きなケガもなく、抱き合って喜んでるみんなを見て私もすごく嬉しかったです。一人一人の選手の良さがプレーにでてて最上級生らしくかっこよかったと思います。最後のセブンスでこうして優勝できて本当によかったです!』

タイヨウ
『決勝戦は、今までにない気持ちの高ぶりを感じました。先にトライをとられても仲間を信じきり、みんなの声援で励まされたから、勝つことが出来たのだと思います。さらなる高みを目指して、より強くなります。』

リョウゴ
『去年セブンスで総合に負けてとても悔しい思いをしました。今年はそのリベンジを果たし、最後のセブンスを優勝で終わることができてとてもうれしいです。セブンスで得たことを15人制でも生かしていきたいです。』

ユウスケ
『自信もあったけど、不安もありました。去年の悔しさから今年への成長で、絶対に勝てると思っていた、それでも敗けられない相手との戦いでの重圧は拭いきれませんでした。そんななかで勝ち取った勝利はとても大きかったです。暑いなかでのたくさんの声援やサポートが励みになりました。ありがとうございました。』

ジュンキ
『ディフェンスでは、カバーディフェンスを徹底して1対1になった時に積極的にタックルをして相手を止めることが出来たので良かった。アタックの時は、トライをすることは出来たが大事なところでキャッチミスが多かったので直していきたい。』

ヤマト
『今日の試合は前の試合の経験を活かして、積極的に自分からボールをもらいにいこうとできました。これからはもっと技術をつけていきたいです』
 
 最高の結果を出した3年生、最低の結果となった2年生、優勝と準優勝を占めたのに最低の雰囲気の1年生。その違いを考えてみると、空気を作る力だろう。
 3年生はリョウスケ・シゲルを中心に、どんなときでもポジティブな声を出し続ける。「どんな言葉を使えば、仲間が気持ちよくプレーできるか、いい空気に覆われていいプレーができるのか」が自然に分かっている。周りへの影響力があるトモマサ、アサト、ヒロタカも、ポジティブな言葉が多いだけでなく、厳しい言葉かけでも日本語の選択や言い方、しぐさなどが、自然とプラスの空気を醸し出す。

 思い返せば、一昨年の稲垣太一主将もそんな力を持っていた(間違いなく無意識だが・・・)。昨年の岩田健太主将は、仲間が恐怖心を抱きかねない厳しさを持ち、周りにも高い要求をしていたが、実は常に仲間の心理状態を想像し、チーム全体が燃え、勇気づけられる叫びと振る舞いに徹していた。
 これもチームとしての重要な実力の一つ。今の下級生に足りないのは、この力で間違いない。「仲間が各自の実力を出し切り、勇気と責任感ある最高のプレーをする」という目的を果たすために、自分の言葉が、自分の表情が、しぐさが、プレーが、いったいどんな影響を与えるのか。

 自分が凹んでいる。自分が苛立っている。そんな顔としぐさは、試合中は一切マイナスでしかない。本物のいい選手は試合中に下を向かないし苛立ちもしない。眉一つ動かさず淡々と落ち着いてハードなプレーを繰り返すタイプか、ポジティブな表現方法でプラスの空気を意識的に作り出すタイプだ。
 一人の力を1とすると、チーム力は「1×15=15」なのか、「1.2×15=18」となるのか、「0.8×15=12」となるのか、全ては自分たちで作り出す空気で決まる。
 3年生の優勝は、あらためてそんなことを考えさせてくれた。






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