神奈川県立横須賀高校ラグビー部

　平成２５年１月１３日大津公園グランド。横須賀高校ラグビー部伊藤組は「３－３６」で関東学院に破れ、シード権を失った。それから４６９日もの時を経た。

　４月２７日、会場は慶應高校グランド。津田組は新人戦県３位の法政二高を破り、悲願であったシード権を奪取した。津田組だけの勝利ではない。伊藤組が積み上げた努力の日々の延長線上にある、横高ラグビー部の勝利だ。

　抽選会で法政二高の山に入ってから、この一戦だけを常に意識して日々を過ごした。フィットネス中もブレイクダウンの練習中も、常に「法政！法政！！」の怒号がグランドに響いた。今年の法政二高は神奈川選抜候補の選手を多く有する待望の代。新人戦で日大高校のベスト４牙城を崩し、その実力が確かであることを証明した。

　勝負の鍵は、相手の強みを出させないゲームメイクができるか。そして、ＤＦで粘り少ないチャンスをものにする津田組らしいラグビーができるかだった。

　試合は想定どおり、「攻めまくる法政と守り続ける横須賀」の構図となった。

　膝下に刺さり続ける。何度でも立ち上がり、タックルに襲い掛かる。それでも再三ラインブレイクされるほど、法政のアタックは見事だった。自陣ゴール前の窮地を何度も何度も凌ぎきり、前半を「１２－７」で折り返した。

　後半、先制トライで１９－７とするも、法政の猛攻は止まらない。次第に横高のスタミナが切れ、ＤＦラインが次々に破綻した。残り４分、大事な時間で相手のエースキャプテンに個人技でトライを奪われ、１９－１４。さらに法政の猛攻を受け続けたが、ギリギリの窮地で相手がペナルティー。追い風に乗せてエリアを大きく戻すと、ＦＷが意地のトライでノーサイド。最終スコアは「２６－１４」だが、残り１分まで逆転の危機に晒されての逃げ切り勝利となった。

　近年、法政にはおそらく横須賀に対して悪夢の記憶しか刻まれていなかった。３年前のロスタイム逆転サヨナラ４５ｍＰＧ。２年前は関東大会を懸けた試合で横須賀の圧倒勝利。だからこそ、この日に懸ける想いは凄まじいものがあった。

　いつもの爽やかな雰囲気を捨て去り、キックオフ前から色すら見えそうな熱を発散していた。横須賀よりも早くから始めたウォームアップは、まるで威嚇するかのように全員で叫び、盛り上がり、一体感を周囲にこれでもかと放った。その気迫は、ノーサイドの瞬間まで衰えることはなかった。

　試合後、そんな法政の選手から「関東大会、絶対に行ってください」と想いを託された。凛としたその眼差しに、深く深く頭を下げたくなった。横須賀は今日感じた法政の熱を忘れてはいけない。

 

津田

『試合に勝てた事が本当に嬉しいです。個人としては、肝心なところでのスローミスやタックルミスなど情けないプレーをしてしまいました。勝つことができたのは、本当にチームの皆のお陰だと思います。それでも一つ自信になった事があります。相手は違うけれど、去年と同じベスト８をかけた試合、同じ会場で、去年は届かなかったゴール前ラスト１ｍ。それをトライまで押し込めたことです。次の関東戦では自分がもっとチームを引っ張れるプレーをして、勝って関東大会出場を決めたいです。』

シュンスケ

『津田組の目標であるベスト８を達成した瞬間、思わず感極まってしまいましたが、関東大会出場も目標であることを忘れてはいけません。今ここでほっとする余裕はないと思っています。次の関東学院はとても強いです。

また１週間気を引き締めて、法政のためにも、目標のためにも、絶対に、勝って関東大会に出場したいです。しっかり反省をして、皆が積み上げた努力をここで実らせて、歓喜の輪を全員で作りたいです。』

フウタ（新人戦の関六戦開始早々のケガ以来、３ヶ月半ぶりの復活を堂々のパフォーマンスで果たした）

『ケガの期間支えてくれたみなさん、最高のサポートと力強い応援ありがとうございます。もっと走ってタックル決めて次も勝ちます！』

ユウタロウ

『ベスト８に入ると言うことを目標にいままで色々なことをやってきたので本当に嬉しいです！でも自分自身ダメなプレーが多かったのでしっかり修正して次の試合１００％の力が出せるように頑張りたいです。』

　５月４日、準々決勝。相手はあの関東学院。伊藤組からシードを奪い、伊藤組を終わらせたあの関東学院だ。津田組として絶対に関東大会に行きたいという想い、伊藤組の想い、法政二高の想い、すべてを背負って津田組らしく挑みかかる。この勢いに乗って。